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日立台にネルシーニョが帰ってきた。
名将はピッチの内も外も掌握する。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/06 08:00
苦しみながらも開幕2連勝と好スタートを切った柏レイソル。名将・ネルシーニョのもと、1年でのJ1返り咲きを狙う。
ピッチ内外で発揮されてきた対応力。
こうした百戦錬磨の対応力は、もちろんピッチ外でも発揮される。
例えば草創期のヴェルディ川崎を率いた'90年代半ばには、こんな逸話がある。
強烈な個性の集合体だったヴェルディは、ピッチ内での口論は日常茶飯事。あるとき柱谷哲ニとビスマルクが激しく口論しながら、ハーフタイムのロッカールームに引き上げてきた。
このときネルシーニョは、どうしたか。
ドッカーンと大爆発したのである。大爆発して、ふたりの荷物をロッカールームの外に出してしまった。
これには柱谷もビスマルクも呆然とするしかない。こうしてネルシーニョは一気に場の空気を掌握してしまった。これくらいの芝居ができるから、ブラジルでも長く監督ができるのだ。
クラブW杯でも強引にホテル変更。
柏での第1次政権でも、いいエピソードがある。
'11年にJ1優勝を果たした直後、柏は日本開催のクラブワールドカップに臨んだ。彼らは勝ち進めば7日間で3試合、豊田で戦う強行日程となったが、このときもネルシーニョは怒ったという。対戦相手に比べて、スタジアムから遠いホテルを主催者からあてがわれたからだ。
「開催国代表である我々が、なぜこんなに不便なところに泊まらなければいけないんだ」
そういって強引にホテルを変えさせたのだ。
勝利のためなら一切の妥協はしない。
これがネルシーニョが掲げる“VITORIA”の精神。監督が戦う姿勢を見せれば、選手たちの士気は当然上がる。こうして柏はクラブワールドカップの準決勝まで勝ち進んだ。