マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
沖縄の先生に聞いた、野球と戦争。
「沖縄を単なるリゾートとしか……」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/02/26 08:00
他の地域で野球に関わる人間にとって、沖縄は「キャンプに行く場所」かもしれないが……。
野球ができることに感謝する、とは何か。
「大好きな野球が思いきりできることに感謝しながら」
ここ数年、球児たちの口からさかんに発せられるおなじみのフレーズである。
では“感謝”とは、果たして何をすることなのか? 彼らに問うて、あまりピンと来る答えが返ってきたことがない。
戦時下の沖縄にも、たくさんいたはずの野球小僧たち。
今からわずか70年ほど前のこの国で、思う存分ボールを投げ、打ち、追いかけたかったにもかかわらず、それが叶わなかった同じ年ごろの球児たちの“無念”を実感すること。
それも、彼らが掲げる“感謝”につながるのではないだろうか。今、自分たちが野球に取り組めることがありがたい、ありがとう! そんな思いを実感できるのではないだろうか。
「戦争体験のない今の子に“実感”は無理でも、せめて、今の言葉でいえば『寄り添う』っていうんですか。実感に近い思いを持って帰ってもらえたらって、思うんですね」
あくまでも控えめな物言いの中に、今も戦跡の隣りで日々暮らしている沖縄の人たちの偽らざる本音が聞こえてくるようだった。