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日本テコンドーに濱田3兄弟あり。
兄・康弘は7連覇、真由は手術決断。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2019/02/23 09:00
左から兄の濱田康弘、真由、弟の一誓。日本テコンドー界期待の星だ。
「ポイントを欲しがるな」
古賀コーチは「欲しがるな」という指示も出していた。
「ポイントを欲しがるなという意味です。欲しがったら、エゴが出る」
その思惑通り、濱田は欲を出して闘っていない。ケガのせいで得意技のひとつであるカットという相手を懐に入れないための蹴りを打てなかったからだ。濱田は「そのせいで、あっと思うようなチャンスを逃していた」と言う。
「国内だったらいいけど、海外で同じことをするのは怖い。だからこそ今回関節唇をくっつける手術をしようと決心しました」
長らく濱田はリハビリ中心の生活を送ってきた。ありえない角度から打点の高い蹴りを繰り出すテコンドーという競技の特性を考えたら、可動域の広い股関節は必要不可欠となる。
今大会では-80kg級に出場し、決勝では絶対王者の江畑秀範に肉薄した実弟・濱田一誓の証言である。
「姉は全然蹴れないという時期が長く、道場に来てもひとりでずっとリハビリをやっていました。リハビリに没頭するあまり、テコンドーの話題を振れなかったくらい」
世界選手権よりもリハビリ専念。
それだけリハビリに専念したおかげで今回復帰できたわけだが、濱田はよくわかっていた。東京オリンピックで金メダルをとれるレベルまで復活したわけではないことを。だからこそ東京オリンピックに間に合うギリギリのタイミングでの手術を決意したのだ。
「なるべく手術をしないで五輪までいけるかと思ったけど、治らないので手術をすることに踏み切りました」
手術をしたら、それから半年間の新たなリハビリが必要といわれた。今回全日本を制覇したことで、5月にイギリスで行われる世界選手権への出場切符を手にしたが、術後の新たなリハビリに専念するため辞退する意向だ。
「今大会は全日本の強化選手に選ばれることが一番の目的だった。東京五輪もあるけど、まず目の前の目的も大事にしたかった」