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腎臓移植手術から見事に復活した、
五輪金メダリストハードラーの人生。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2019/02/25 07:30
腎臓移植手術を乗り越え、今年の7月に34歳になるアリエス・メリット。東京五輪でも彼の走りが見られるか。
1本走るごとに倒れ込むような状態。
2つある腎臓が20%しか機能しない状態で、2015年の全米選手権で3位に食い込み、北京世界陸上の代表権を獲得。しかしレース1本走るごとに倒れ込むような状態で、医者は一刻も早く腎臓移植をするように進言したが、メリットは「手術の前に、北京世界陸上に挑戦したい」と訴えた。
「手術に挑戦する勇気をもらうためにメダルがほしい。家にいたら、『あと何日で手術だ』と数えて落ち込んでしまう。でも走っていたら、手術のことは考えなくていいから」
目に少し涙を浮かべながら必死にまくしたてる姿が印象的だった。
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世界陸上では1本1本が必死だった。決勝では後半わずかなミスで金は逃したが、銅メダルを獲得した。
「銅メダルだけど、僕にとっては金メダルだ」と笑顔で話すメリットに、銀メダルの選手がこう言った。
「そんな体でレースを走ったなんて信じられない。手術がうまくいくように祈っている。また一緒に走ろう」
SNSでも応援や励ましの言葉が並び、手術に向かうメリットを後押しした。
6週間で練習復帰、東京五輪も視野。
姉ラトヤさんから提供を受け、2015年9月1日に腎臓移植を行った。術後の経過は良好で、わずか6週間で練習に復帰。リオ五輪で連覇という目標のために1秒も無駄にしたくなかった。
手術から10カ月。代表切符をかけた五輪選考会でメリットは3位に0秒01差、胸の差で4位に終わり、五輪連覇の道は閉ざされた。復帰したうれしさと連覇をかけた勝負に挑めない悔しさで、複雑な表情だったが、メリットは諦めなかった。
2017年、メリットは再び世界陸上の舞台に立った。
「もう2度とスポーツの世界には戻れない、一生、薬を飲み続けなければならない、そう医者に言われた。でも僕は楽観主義者だから。言われたことは右から左に聞き流して走り続けた。だって諦めず、思い続ければ願いは必ず叶うと思うから」