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大坂なおみとサーシャの「別れ」。
女子テニス特有のコーチの役割。
posted2019/02/20 11:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
大坂なおみが突然のコーチ解任を発表してから1週間が経つが、まだ何もかもがモヤモヤしたままだ。原因についての憶測が乱れ飛び、大坂とサーシャ・バインが紡いだ1年あまりのストーリーに酔いしれていたファンの気持ちは、一向に晴れない。
かつてこれほどテニスコーチが日本で話題になったことはない。錦織圭にマイケル・チャンがコーチについてからしばらくの間の例があるが、それにしたってこれほどではなかった。
それに、自身がグランドスラム優勝経験もあるチャンはもともと日本でも選手時代からよく知られた存在だった。選手としても指導者としても“それまで”の情報が何もないにもかかわらず、日本でこんなに人気者になったテニスのコーチはこのバインくらいだろう。
それゆえ、大坂とバインの契約解消だけがこうして取り沙汰されているのは当然のことだが、実はこの2カ月間、女子テニス界ではめまぐるしいコーチ移動が起こっていた。
WTAは公式サイトで、昨年末からのトッププレーヤーたちのめまぐるしいコーチ交代の様相をまとめて、『コーチング・メリーゴーランド』と呼んで紹介している。
スタートは、昨年11月に当時世界1位のシモナ・ハレプが4年来のコーチだったオーストラリア人のダレン・ケーヒルと別れたこと。「家族との時間を持ちたい」というケーヒルの意向で、とりあえず1年間の期限付きということだ。そしてハレプは全豪オープン後に、つい最近までダビド・ゴファンのコーチだったベルギー人のティエリー・ファンクリーンプットと試用期間に入ったが、わずか1週間でそれを解消した。
ケルバーも、アザレンカ、ビーナスも。
昨年のウィンブルドンで通算3つ目のグランドスラム・タイトルを獲得したアンゲリク・ケルバーは、1年間をともにしたベルギー人のウィム・フィセットとWTAファイナルズ前に別れている。
4週間後、そのフィセットが2015年から2016年に組んでいた元女王ビクトリア・アザレンカのもとに戻り、そのさらに2週間後、ケルバーは同じドイツ人で元男子世界ランク5位のライナー・シュトラーを新コーチに招いた。
超ベテランのビーナス・ウィリアムズは、11年もの年月をともに歩んだアメリカ人のデイビッド・ウィットとオフシーズンに別れた。24歳のマディソン・キーズは元女王リンゼイ・ダベンポートと別れて、2017年に大坂のコーチについていたオーストラリア人のデビッド・テイラーとのトライアル期間を経て、これまで主にアメリカの男子選手のコーチを務めてきたジム・マドリガルに落ち着き、コーチのテイラーはその後、昨年の全豪オープンベスト4のエリス・メルテンスが拾った。
一昨年の全米オープン・チャンピオンのスローン・スティーブンスの長年のコーチだったアメリカ人のカマウ・マリーの姿は全豪オープンになく、大会後にプエルトリコのモニカ・プイグがこのマリーを雇ったことをツイッターで発表した。そして締めくくりは、世界的にも衝撃的だった大坂とバインの“分裂”だった。