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「4番・岡本和真」ついに結実の年。
原・高橋両監督はどう育ててきた?
posted2019/02/16 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
ぐんぐんとボールが伸びる。
絶対飛距離を持つホームランバッター独特の、なかなか落ちてこない打球だった。
2月10日に行われた巨人の紅白戦。白組の4番を任された岡本和真内野手が放った“今季1号”の軌跡だった。
「いい感じで捉えられたかなと思います。飛んだ方向も良かった」
左腕・池田駿投手の低めの真っすぐをバットに乗せた。決して強引に引っ張らない。逆らわずにセンター方向に打ち返した打球は、それでもサンマリンスタジアムのバックスクリーンに飛び込んだ。
推定飛距離130メートルの特大アーチだった。
「この時期に、あそこの場所に放り込むのは同じ“昔のバッター・原辰徳”としても、凄いなあと。でも彼の中ではサラッと打ったんじゃないの。またサラッと打ってほしいね」
すでに今季の4番起用を公言する原辰徳監督が、少し興奮した口調でこう絶賛する。
自分の目に狂いはなかった。
3度目の監督就任で迎えたキャンプでこの打球を見て、指揮官は改めてその思いを強くしているはずである。
有原か? それとも中村か?
話は2014年に遡る。
10月20日。この日、東京・大手町にある巨人の球団事務所には原沢敦GM(当時)を含めた全スカウトが集合、3日後に迫ったドラフト会議の最終戦略を練っていた。
この年は東京六大学で通算19勝12敗、210三振を奪った本格派右腕の早大・有原航平投手が即戦力ナンバーワンとして注目を集め、同じ早大出身の中村奨吾内野手、済美高の安樂智大投手に夏の甲子園大会で注目を集めた前橋育英の高橋光成投手らが1位入札候補としての前評判を得ていた。
即戦力の獲得を目指すとすれば投手なら有原、野手なら中村か。この2人のどちらに行くのか。
スカウト会議ではこれまでも何度も評価が検討され、それぞれに意見の分かれるところでもあったが、いよいよ最終決断が下される。
毎年行われている作業だが、それでもこの瞬間にチームの将来が託されるだけに、集まったスカウトの表情には得も言われぬ緊張感が漂うのも仕方なかった。
そんな張り詰めた空気を切り裂いたのが当時の原辰徳監督だったのである。