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斎藤佑樹が引退を止めた2017年。
「支えてくれる皆さんがいるから」
posted2019/02/15 11:30
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
「もう引退した方がいいかなと思います」
2年前の秋の夜、冷静な表情で「引退」の二文字を口にした斎藤佑樹に、その場にいた全員で反対しました。
チームに求められる結果と自らが求めるパフォーマンスに大きな差があるというのが、斎藤が引退を口にした一番の理由でした。
あの夜、僕らは彼の気持ちそっちのけで全力で止めました。止めなければいけないと思いました。
ただ、その年の暮れ、または年明けに引退会見をするのでは……スポーツキャスターとして、実況者として、1人のファンとして「まだ引退はしないで欲しい」という思いを抱えながら過ごした、2017年のオフだったことを覚えています。
しかし、斎藤佑樹は引退を選択することはありませんでした。そのオフもたった1人で黙々と自主トレを行ない、2月1日にファイターズのユニフォームを着てグラウンドに立っていました。ホッとしました。心の中にあった不安が取り除かれた瞬間でした。
応援してくれる人たちへ恩返し。
斎藤佑樹はなぜ、引退を選択しなかったのか?
昨年、インタビューで単刀直入に聞いてみました。返ってきた答えはただ1つ。
「支えてくれる皆さんがいる。だからです」
想像以上にシンプルな答えでした。苦悩の時間が長く続く中で、初めて聞いた「引退」という言葉。最終的に導き出した答えは、現役続行。自分を支え、応援してくれる方たちへの恩返しの想いが、自らを奮い立たせていました。
今年も斎藤佑樹は1人、グアムに飛び立ち自主トレを行うことを決めました。1月半ば、彼を取材するために現地を訪れました。