草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
杉下茂と野茂英雄が中日キャンプに!
魔球フォークを巡る70年前の伝説。
posted2019/02/13 17:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
沖縄や宮崎から野球の香りが漂ってくる季節になった。キャンプ地巡りも楽しいが、スポーツ紙の報道を細かく追うのも捨てがたい。選手の動向だけでなく、その球団ゆかりの関係者が訪れたというニュースも2月ならではの興味をかき立ててくれる。
沖縄県北谷町の中日キャンプには、野茂英雄氏が訪れた。てっきり近鉄OBのコーチがたくさんいるからだと思っていたら、記事には与田剛監督とのご縁だとあった。
ドラフト同期、全日本のチームメート……、などと書いてあったが、筆者が思い浮かべたのは2人が大活躍した1990年放映のトレンディドラマ「すてきな片想い」である。
中山美穂演じるOL役が「与田」、柳葉敏郎は「野茂」。なるほど。28年がたっても、与田と野茂はやはり結ばれる運命だったのか。
なあんてことはスポーツ各紙には書いていなかったが、代わりに「トルネード」とともに「フォークの神様」もいたことをちゃんとフォローしてくれていた。
杉下茂氏。
1925年生まれだから、大正14年である。93歳。毎年欠かさず沖縄キャンプを訪れ、ひ孫ほど年の差がある若手にも投球術を授けている。
神様がフォークに出会った瞬間。
トルネードと神様。フォークの巨匠がそろったと知るだけでも興奮する。
参考までに杉下氏が「本物認定」している使い手は、ご自身と野茂以外に4人いる。それは村山実(阪神)、村田兆治(ロッテ)、佐々木主浩(横浜など)、伊良部秀輝(ロッテなど)である。そして杉下氏いわく「野茂以外は教えたことがある」。さすがは神様。弟子のラインナップも超一流なのだ。
神様がフォークと出会ったのは明治大学在学中だ。帝京商(現在の帝京大高)、後に中日でも監督と選手という関係になった、天知俊一から「フォークってのがあるぞ」と言われたのがきっかけだ。