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「上司にしたい女性」マリリンは
カーリングの選手&指導者&敏腕GM。
text by
竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph byShigeki Yamamoto
posted2019/02/13 11:00
昨年12月、「ユーキャン新語・流行語大賞」の授賞式に出席した本橋麻里。「そだねー」は年間大賞に選ばれた。
ワーカホリック寸前の働き方と、自分の時間。
スーツに袖を通すことも増えた一方で、ブラシを持って週に2~3度はセカンドチームのトレーニングに参加し、指導と育成に当たる。ロコ・ソラーレのメンバーが“妹たち”と呼ぶ、この「ロコ・ステラ」は残念ながら常呂町内の予選で敗退し、11日から札幌で開幕する日本選手権での姉妹出場は叶わなかった。
しかし指導者本橋は「そんなに簡単じゃない。強いチームを作るのには時間がかかるということです。ファーストシーズンから真剣勝負の中で、嬉しい勝ちと悔しい負けを経験できたのは収穫でした」とポジティブだ。
理事であり、GMの働きをし、指導者でもある多忙な彼女に、休みはあるのか。どう過ごしているのかと聞いたことがある。
「チームがカナダ遠征中は時差もあるし、向こうと連絡を取りつつ、日本での雑務をこなしていると、どうしても完全なオフという時間はなかなか作れないです。でも例えば、息子を保育園に送り出して、主人が仕事に出かけてぽっかりと時間ができると『お、今だ』と思って、ゆっくりコーヒーを淹れるんです。それを飲みながら、たまったメールの返信や取材のアンケート記入といった雑務をするのが楽しい」
もはやワーカホリックといっても過言ではない本橋だが、それでもカーリングチームのフロント業務というポジションに「まだ誰もやっていないから、難しいけれどやりがいがある。やりたいことは増える一方です」と気鋭を見せる。
アイドルから「上司にしたい女性」へ。
“マリリン”として世に知られたトリノ五輪は13年前だ。それから長らくカーリング界のアイコンを務め、結婚と出産を経て、今や「上司にしたい女性」のアンケートに名前が挙がるようになった。
アイドルでありトップランナーであり、挑戦者である彼女のやりたいこと、あるいは冒頭の「成功」はどこにあるのだろうか。改めて聞いてみた。曖昧なんですけど、と前置きした上で彼女は即答した。
「カーリングを、競技者がみんな経験者であることを誇ってくれるようなスポーツにしたいんです。例えば、甲子園出場とか箱根駅伝を走ったみたいな、みんなが『へえ、カーリングやってたんだ。すごいね。話聞かせてよ』って言ってくれるような」