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バレー清水邦広、復帰も再び膝手術。
度重なる試練もコートに必ず戻る。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byPanasonic PANTHERS
posted2019/02/12 10:45
パナソニックは現在レギュラーラウンド首位。清水は無念の再離脱となったが、一丸となってプレーできるか。
深津もおどろいた、リベロ永野からのトス。
次もサーブレシーブが乱れ、リベロの永野がボールの下に入ると、永野は迷わずライトへトスを上げ、それを清水が打ち抜いた。
「オミ(深津)がビビったのかどうかわかんないけど、自分はチャンスがあれば上げようと思っていて、たまたまそのチャンスが来た。それが1本目だったんで、決まってくれてよかったです」と永野は振り返る。
深津は「ビックリしました。この状況で行ったー! と思って」と笑った。
そんな周囲の思いも清水はわかっていた。
「2ローテしか中にいられなかったので、その中では全部オレに持ってこいよ、というぐらいの思いでした。早く打ちたかった。でも深津はたぶん、Aパスからブロックを振って、いい状況で気持ちよく打たせたいという気持ちがあったと思う。永野さんは、ボールが行った瞬間、『絶対(トスが)くる』と思いました」
アップゾーンから見ていた福澤は、「この1年間、清水がすごく苦労して、もがきながらも一生懸命前を向いて戦っていた姿がフラッシュバックして、最初のスパイクを見た時はちょっと泣きそうになりました」と感慨深げに語った。
清水は2、3、4セット目にも2ローテーションずつ出場し、サービスエースを含む4得点を挙げた。
怪我の瞬間、バレーをあきらめた。
試合後、1年前をこう回想した。
「1年前に怪我をした時は、またユニフォームを着ることが想像できませんでした」
昨年2月18日。福岡市民体育館で行われたJTサンダーズ戦の試合中、ライトからスパイクを放った清水は着地の際に右膝をひねって倒れ込み、起き上がることができなかった。
「右膝から下がブランブランで。ただ事じゃないというのはすぐにわかって、その瞬間にもうバレーボールはあきらめました」
スタッフたちが清水を運び出そうとするが、少しでも動かすと激痛が走るため、静まり返った体育館に清水の叫び声が響き渡った。
病院では右膝の前十字靭帯断裂、内側靭帯断裂、半月板損傷、軟骨損傷で全治12カ月と診断された。
「あの時は本当にきついし辛いし、『なんでオレが?』ということが頭の中をぐるぐる回って、現実を受け止められなかった。絶望的でした」
清水はその前年にも右足の舟状骨骨折で約10カ月間のリハビリを経て復帰していた。だから全治12カ月の診断を聞いた時には、「もうリハビリをする気力もなく、先生に『辞めます』と言いました」。