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長谷部誠が語るカズへの憧憬。
「自分もいつまでもプレーしたい」
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byRyu Voelkel
posted2019/02/04 08:00
長谷部誠は代表引退後もフランクフルトの主力。ピッチでの姿は“皇帝”の風格すら感じさせる。
血気盛んだった18歳のハセ。
プロ入り当時、18歳のハセはとにかく血気盛んで、練習では先輩後輩関係なく叱咤の声を浴びせ、時にチームメイトと胸ぐらを掴み合って口論することもありました。
練習時のミニゲームである外国籍選手に足を削られた際には、激昂したもののオフト監督に「相手の足をかわせば問題ないじゃないか」と突き放されて、不貞腐れた表情をしていたことを覚えています。とはいえ、それはすべて彼がサッカーに心血を注いでいる証拠で、一切の妥協なき姿勢は今も貫かれていると感じます。
誤解なきよう補足しますと、ピッチから離れた際のハセは以前も今も相手を常に気遣い、心情を慮ることのできる人物です。
2002年、僕が初めてハセにインタビューしたのは浦和のキャンプ地だった函館でした。同期の徳重健太との対談。カメラマンが「蟹を持ってポーズを取っていただけますか?」と無茶な注文をしても、ノリノリで応じてくれたことを覚えています。
引退後について実は考えてない。
今回インタビューをしてみて意外だったのは、彼はまだ、現役引退後のプランについて何も熟慮していないということです。
風貌はスーツを着てバリバリと働くビジネスマンと言われても違和感がないですし、過去、現在、未来を客観的に見据えて、事前に選択肢を有しておくようなタイプだと思っていたので驚きました。しかし彼自身は今、サッカーに自身の全精力を注ぎたいと思っていて、ひたすらピッチ上でのプレーに邁進したいのだと語っていました。
よくよく考えてみれば、そんなハセの心情は予測できたかもしれません。18歳の彼も、35歳の彼も、サッカーに注ぐ情熱の度合いは同じ。いや、むしろ多くの経験を積み、知見を得た今のほうが、その情熱のパワーが漲っているのかもしれません。
プロ初年度にJ1出場を果たせず、サテライトリーグでもベンチ入りしたフィールドプレーヤーの中で唯一出場できなかった時に、ロッカールーム脇で号泣していた彼の姿を知る者としては、彼のサッカーに対する真摯な想いに触れて感慨深くなりました。