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ベテラン藤野、新鋭上野は伸び盛り。
フェンシング高円宮杯を見逃すな!
text by
宮田文久Fumihisa Miyata
photograph byYasunobu Seo
posted2019/01/23 07:00
昨年12月の全日本選手権で優勝インタビューを受ける藤野大樹。4度目の日本一だが、まだ五輪出場はない。
リオを逃した藤野の全日本優勝。
藤野大樹は、長らく国内トップレベルのフェンサーであり続けている。
しかしながら、ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪ともに、出場の機会を逃した。
特にリオ五輪に出場できなかった悔しさは、大きかった。
「リオのあとは、自分のフェンシングスタイルから生活リズムまで、すべてをいったん崩して、見直していきました。すぐには結果につながらない状況も続きました」
昨年、3年ぶり4度目の全日本優勝で見せたガッツポーズは、彼にとっては、長いトンネルを抜けた喜びに満ちたものであり、同時にV4は同種目史上最多記録となる快挙でもあった。
「やっと、試行錯誤が形になったのかな、と。本当に嬉しくて、改めて自信を持つことができる結果だったと思います」
「競り勝てる」スタイル。
国内のみならず世界で結果を残す選手になるために、「競り勝てる」フェンシングスタイルを、近年模索してきた。
「今、たどり着いたのは、15本先取で10対10になっても、“おいしい”とさえ思えるスタイルです。そこからでも落ち着いて、もう一段ギアを上げていけるようになった。自分の中にもうひとり自分がいて、相談することができるような感覚なんです」
その境地は、ベテランならではのものだろう。全日本決勝も、まさに「競り勝った」試合だった。
「今の選手は、若い頃から優れた指導者に恵まれていて、技術、メンタル、栄養面まで、早いうちから“知る”こと、“理解する”ことはできる。でも、僕自身がそうだったように、知識を本当に“体現する”のはなかなか難しい。自分はようやく、それができるようになってきたと感じています」
さすが、ベテラン。人に歴史あり、ということを、藤野の話を聞いていると実感する。
その一方で、藤野はまだ自分の中に伸びしろを感じている。
「僕のピークもまだわからないし、未知数。だから面白いんです」