「叔父の豚をもっと広めたい」

　彼に限らず、世間一般よりも金銭的な部分で恵まれているとされているプロ野球選手。菊地も時には高価で美味な食事を堪能し、身に着けるものに関しても投資を惜しまないこともあったのだろう。プロ野球選手を離れて「社会人として勉強した」という。アルバイトなど職を転々とする中での気付きが、前述したコメントに凝縮されている。

　菊地が生まれたころから当たり前のように食していた、叔父が生産し出荷する豚肉は、周囲から好評だった。プロ野球選手時代にお世話になった方々へと贈った際にも、よく感謝をされたのだという。母が手伝いをし、手塩にかけてその豚を育ててもいた。

「そんな叔父の豚を、もっと広めたい。知ってもらいたい。それが、母への恩返しだとも思っているので」

　販売に携わるだけではなく「もっと豚のことを知らないといけない」と、諸々の飼育に関わる豚舎での業務から現在、学び始めているという。

　引退後、息を潜め、悩み、葛藤をしながら過ごした。プロ野球界とは違い、決して華やかではない世界にある社会の仕組み、道理を知った。価値観が変わった。そして、選んだ道が養豚業だったのである。現役時代同様、真っ直ぐ進むと決めた第二の人生なのだ。

　裏があれば表がある。日陰があれば日向がある。

　どちらへと転じるかは、彼次第である。