星野氏が与えた大きな影響。

　主将として春夏連覇に導いた立浪氏の晴れ舞台に駆けつけた中村氏も、目を細め誇らしげに語った。

「球道即人道」

　中村野球の根幹をなす考えだ。日常の行いこそが野球につながる。ふるまいに問題があれば、野球にも跳ね返る。PL教団には「徳を積む」という教えもあるが、在学中の立浪氏は清掃活動に熱心に取り組むことで徳を積み、絶体絶命のピンチにも動じない心を鍛え上げた。

　こうしてプロの世界に飛び込んだ立浪氏が、最も影響を受けたのは星野仙一氏だろう。

　南海と競合したドラフトでは「オレが引いてくるから安心して見ておけ」と見事に当たりくじを引き、入団時に立浪氏の小柄な体格への不安を口にする報道陣には「男の大小は体の大きい、小さいでは決まりません。肝っ玉の大小で決まるんです」と一蹴。そして開幕戦では先発で起用した。

「いや、本当によく使ったと思いますよ。自分でも何とかやっていけそうかなと感じた反面、一軍で試合に出るのは3年目くらいからかなとも思っていたので。18歳の高校生をいきなり使うなんて、普通ならあり得ないですよね」

　立浪氏がしみじみと語るのも当然だ。

宇野コンバートとラソーダさん。

　高卒ルーキーの野手が開幕戦から先発出場したのは、セ・リーグでは王貞治以来の大快挙だった。しかも、当時の中日で遊撃手のレギュラーは、宇野勝だった。4年前の本塁打王にして、前年も30本。脂ののりきった中軸打者だった。

　そんな名選手を二塁にコンバートした経緯は宇野氏の記憶（キャンプ中に監督室に呼ばれ、告げられた）をもとに以前にも書いたが、立浪氏の話も興味深いので紹介しておく。

「おそらくですが、最初は僕を使う気はなかったと思います。でも、何とかなりそうだと思った段階で、ラソーダさんに『キミの体の使い方は二塁手にピッタリだ』と宇野さんに言うよう仕向けた。そう聞いたことがあるんですよね」

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