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保育士志望の大学生が金メダリスト。
佐藤綾乃が振り返る奇跡の4年間。
posted2019/01/03 16:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
大学入学後の急成長が、人生を大きく変えた。
2018年平昌五輪のスピードスケート女子チームパシュートで日本チームの一員として世界の頂点に立った佐藤綾乃(高崎健康福祉大)は、当時、21歳73日の大学3年生。21歳244日で'98年長野五輪フリースタイル女子モーグルを制した里谷多英の記録を塗り替え、日本女子の冬季五輪史上最年少金メダリストになった。
「これまで自分に自信を持つことがあまりなかった私だけど、チームパシュートを通して、自分の力を信じることができるようになりました」
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表彰台の一番高いところへ、高木美帆、高木菜那、菊池彩花とともに上がった佐藤は、感無量の面持ちだった。
最年少金メダルのシンデレラ。しかし、大学入学当初はスケート一筋というわけではなかった。
そもそも保育士の勉強しようと。
「そもそも保育士の勉強をするために健大に入学したんです」
おっとりした口調で佐藤は続けた。
「入学したての時は、どちらかというとスケートよりも保育士になるための勉強を頑張りたいという思いの方が強かった。もちろん、スケートも頑張りたいという思いはあったのですが、当時は日本の中のトップ選手との差はかなりあって、五輪は遠く、私には無理だ、厳しい、と感じていました」
考えに変化が起き始めたのは、大学2年になる直前の春休みに、ナショナルチームに誘われたのがきっかけだ。1年生のときは大学のスケート部での活動。ところが、ナショナルチームに入ってからは「すべてが変わりました」(佐藤)。
日本女子チームパシュートは高木美帆、高木菜那、菊池彩花、押切美沙紀の4人が大会ごとに構成を変えながら滑り、W杯で金メダルを獲得するなど世界トップの実力を持っていた。4人全員が五輪経験者という彼女たちに新たに加わったのが、当時まだ無名の佐藤だった。