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日本中を魅了したカーリング女子の
「いつでもステイ・ポジティブ!」

posted2018/12/31 17:00

 
日本中を魅了したカーリング女子の「いつでもステイ・ポジティブ!」<Number Web> photograph by Sunao Noto/JMPA

カーリング史上初のメダル獲得。流行語大賞に選ばれた彼女たちだが、何よりも人の心を打ったのはその戦いぶりだ。

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph by

Sunao Noto/JMPA

北海道なまりの純朴な彼女たちのどこに、これほどの力が隠されていたのか──。
息詰まる熱戦の最中に見せるその笑顔に、気づけば日本中が魅了されていった。
日本カーリング界の悲願だったメダル獲得までの戦いの軌跡を、
メンバー5人の言葉から振り返る。
2018年平昌五輪で激闘の末、銅メダルを獲得した「ロコ・ソラーレ」。
Number947号(2018年3月1日発売)掲載の特集を全文掲載します。

 2月24日、カーリング女子日本代表「ロコ・ソラーレ(LS)北見」の4人は、3位決定戦が始まる前、いつものような弾ける笑顔で観客席に手を振った。

 前夜の準決勝では韓国を相手に、第1エンドに3失点するなど劣勢になりながらも粘り強く戦い、7-7でエキストラエンドにもつれこむ熱戦を演じた。それでも最後、完璧なドローショットで1点を奪われて惜敗。スキップの藤澤五月は涙を流した。

「悔しい。そのひとことです」

 だが、敗戦のショックは払拭されていた。

 3位決定戦の相手はイギリス。ソチ五輪の銅メダルチームであり、三度五輪出場のスキップ、イブ・ミュアヘッドのリーダーシップのもと、長年にわたり世界の上位で活躍する強豪国である。予選ラウンドでは日本は6-8で敗れていた。

スイーパー、知那を信じて。

 銅メダルをかけた大一番は慎重な試合運びが続いた。一進一退の攻防のなか、日本のメンバーはそれでも笑顔を交え、1投ずつ、アイスの感触を声で伝えあう。

 第4、第8エンドには2点獲得のチャンスもあったが叶わず、1点ずつを互いに獲りあい、3-3で迎えた第9エンド。「ここが勝負時だと分かっていました」と藤澤が振り返るように、試合が動く。先攻の日本は藤澤が最後の一投でガードの裏に隠れるドローショットを正確に決めた。

「自分を信じ、スイーパーを信じ、知那(吉田知那美)のラインコールを信じて投げられました」

 イギリスは1点を獲っても、わずか1点リードで最終エンドを不利な先攻で迎えることになる。互いに無得点となるブランクエンドを狙い、ハウスに1つのストーンも残さないショットを選択するが、わずかにずれて日本の黄色が残る。4-3と今試合初めて日本がリードした。

 最終エンドは日本が先攻。リード吉田夕梨花がセンターガードの裏に回し込むドローショットを決めると、セカンド鈴木夕湖はガードをわずかにすり抜ける絶妙のテイクアウトを決める。さらに吉田知那美もハウス内へのドローショットやセンターガードを置くなど、的確なショットをつないでいった。

【次ページ】 藤澤のラストショットは……。

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