ベテランになっても無邪気。

　そんな話はさておき、である。

　むしろ玉田が喜々としてしゃべっていったのは、しみったれた未練話などではない。

　いつだって、彼が流暢になっていくのはサッカーの話。しかもプレーの会話になると、その口調は滑らかになっていく。

　20代の頃は、まだ今よりも尖っていた。メディアや記者にもそれほど多弁な選手ではなかった。当時、それでも話を聞き出したかったので、現場ではいつもディープなサッカーの話をした。すると、徐々にエンジンがかかり、自分のプレーイメージをどうにかして言語化しようとする玉田がいた。

　ベテランになっても、そんな無邪気な瞬間が表に出るところは変わらない。そんな彼が、ふと口にした一言があった。

「年々感じるんだけど、俺は自分の中でプレーがアップデートできているという実感があるんだよね。この年齢になっても」

玉田の変化と闘莉王のセリフ。

　聞いた瞬間、あることが思い出された。今季の名古屋では本職のFWではなく、サイドハーフを務めることが多かった。先発試合でもFWで起用されたのは1試合のみ。一方サイドハーフでは左右合わせて12試合で先発を果たしている（トップ下は5試合、インサイドハーフで1試合）。

　当然最前線でのプレー以上に、組織的な守備の役割は増える。相手ボールになれば、しっかり守備陣形を作るべく定位置に素早く戻り、さらに前からのプレスに加えて、背後のサイドバックを手助けするべく自陣にまで下がる場面も多くなる。

　汗をかく玉田のプレーを目にしたあの男が、こんなことを漏らしていたという。

「なんでタマはベテランになってこんな守備をするようになったんだ！　だったら、優勝したあの時代にこのプレーをもっとやってくれていたら、名古屋はさらに強くなったよ！」

　声の主は、田中マルクス闘莉王。

　彼は無類のサッカー観戦オタクである。J1からJ3、もちろん海外まで、時間があればあらゆる試合に目を通す。もちろん古巣の名古屋も気になったのだろう。

　そこで見つけた、玉田の変化。闘莉王らしい檄を含んだセリフだが、今は離れている仲間の変わり様に、しっかりと気づいていたようだ。

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