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名古屋を退団した玉田圭司の告白。
38歳が気づいた「アップデート」。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/12/30 11:00
2018シーズン、玉田圭司のJ1リーグ戦成績は24試合3ゴール。新天地・長崎でもまだまだやれる可能性を感じさせる。
メッシからダビド・シルバに。
2004年のアジアカップで日本の優勝に大きく貢献し、2006年のドイツW杯ではブラジル相手にゴールを決めた。2010年南アフリカW杯にも出場するなど、日本代表としても一時代を築いた。
若い頃の自分を、今、玉田はこう振り返る。
「昔は、頭でサッカーを考えてなんていなかった。本能でやっていたに近い。前からサッカーはたくさん観る方だったけど、でも最近は深く、自分の頭にたくさんのことをインプットしながら観ている。あらためて思う。サッカーって、どんどん頭で考えていくスポーツになっていっているって」
海外サッカー好きとしても知られ、以前は好きな選手と聞かれれば間髪入れずにメッシの名前が出てきた。同じレフティの最高峰。「前まではメッシがどう点に絡んでいるかとか、そこばかりに目が行っていた」という。
今は違う。自分もテクニックを武器にする選手だけに、相変わらずスペイン人らの巧みなプレーを参考にする。ただ、視野に入れるプレーヤーの毛色は確実に変わってきている。
「マンチェスター・シティのダビド・シルバ。神戸に来たイニエスタのプレーも前よりさらに観ている。あとは後方のポジションだけど、ブスケッツの細かい動きも観たり。ああいう選手がいるから、前線の選手が生きる。この年になっても勉強だよ」
何手も先のプレーを予測する。
守備に奮闘するようになったのも、そうした流れの一環である。もちろんポジションが変化したことも関係しているが、とにかくサッカーは味方も敵も、すべてが連結した競技だという意識を強く持つ。
スピードでスペースに駆け抜け、ボールを持てばドリブルを仕掛ける。あの昔の良さを忘れることはないが、そのプレーには一段と深みが増している。
「ここは守備で踏ん張る時とか、あそこの穴を自分が埋めないといけないとか。攻撃でも敵との駆け引きが楽しくて。自分を経由して、何手も先のプレーを予測する。そのためにはどの位置に侵入してボールを受けるべきかとか。
ここはワンタッチ、ここはキープしてためてとか。そうすればスペースでチャンスができるとか、すごくなんでも頭で考えるようになった。自分や味方のみならず、敵も動かすイメージだよね」