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名古屋を退団した玉田圭司の告白。
38歳が気づいた「アップデート」。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/12/30 11:00
2018シーズン、玉田圭司のJ1リーグ戦成績は24試合3ゴール。新天地・長崎でもまだまだやれる可能性を感じさせる。
往年の速さがなくても。
名古屋では、点を取ることも、攻撃の起点になることも、両方を担ってきた。2008年にドラガン・ストイコビッチ監督のもとで、当時くすぶっていた玉田は復活。高い技術を軸に、ドリブルやコンビネーションで敵陣を突破。また左足での精度の高いFKでゴールネットも揺らした。すべては、自分を中心としたサッカーだった。
そんな玉田が、近年の名古屋では味方を生かすことに、生きる道を見出していた。往年ほどの速さはもうない。それでも、技術は何年経っても錆びない。ボールを止める、蹴る。その安定したテクニックを活用し、自分が輝くことに注力していた意識を、他者へと注ぐ。ゴール数やアシスト数は年々減っているが、チームのチャンスシーンに玉田はしっかりと絡んでいることが多い。
新たな実感――。そこに、38歳、現在の玉田圭司は意義を感じている。
「FWでプレーしていたからわかるんだよ。中盤からパスを出す選手でも、自分が輝くためにスルーパスを出す人と、受け手を生かすようにパスを送る人がいる。でも、目的はゴール。点を取ること。だからやっぱりパスを出すことが目的になったり、主役になるわけではない。そういうプレーの深さというか、大切さを、この年になって感じてきている」
40手前でもサッカー小僧感。
そして最後に、ひっそりと一言。
「まあ、こういうプレーを今の年齢から自分がしていって、評価されるかはわからないけどね(笑)」
いつまで経ってもサッカー小僧感が残る。昔から想像していたとおり、玉田は40歳手前になっても、純粋にサッカーが好きでいる。
本人が覚えているかはわからないが、もうずいぶん前にこんなことを聞いた。
「そのテクニックからすれば、年を取っても中盤でプレーしながら息長く続けられるんじゃないですか」
その時の返答はこうだった。
「わかんないけど、やっぱり前でプレーするのが好きだし、それはないんじゃない」
本人の読みは、良い意味で外れた。今あらためて思う。玉田圭司は日本を代表する技術屋だ。とにかく、うまい。そしてそこに、競技を読み解く深みも増してきた。
2019年、新天地はV・ファーレン長崎に決まった。初めての地・九州で、もう一暴れしたい。
このレフティ、まだまだやれる。