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武豊「思い出に残る有馬記念です」
オジュウチョウサンが見せた奮闘。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/12/28 07:00
有馬記念は9着に敗れるも、大健闘のレースをしたオジュウチョウサンと武豊騎手は拍手で迎えられた。
ルメールも「普通に勝てる」。
もっとも平地では獲得賞金が0円だった同馬は、このままでは規定上、有馬記念の出走はかなわない。そこでまずは7月7日、福島競馬場の開成山特別(500万条件)に出走。グランプリへ向け、約半年に及ぶキャンペーンをスタートしたのだ。
平地再転向初戦のこのレースを前に、武豊騎手は言っていた。
「障害戦といえ、上がりの時計をみていると、平地でも充分に勝機があると思えました」
余談だが、武豊騎手に次ぐ年間200勝ジョッキーとなったクリストフ・ルメール騎手も当時、「普通に勝てると思う」と語っていた。
名手2人の予想が正しかった事を証明したのはオジュウチョウサンだった。2600mのこのレースを2分42秒3で走り、2着馬に3馬身の差をつけて堂々と勝利してみせたのだ。
その後、11月には1000万条件の南武特別にも勝って2連勝。有馬記念のファン投票では、1位のレイデオロ、2位のアーモンドアイに続き、3頭しかいない10万票以上を獲得し、晴れてグランプリ出走を決めたのだった。
「内ラチを飛び越えて……」
こうして迎えた有馬記念。武豊騎手にとっては、秋の天皇賞でコンビを組んだマカヒキや凱旋門賞に共に挑戦したクリンチャーらもいたが、オジュウチョウサンの背に乗ることが決まると、枠順抽せん会では自らの手で最内1番枠を引き当てた。
有馬記念の舞台となる中山の芝2500mはデータ的にも内枠が絶対有利。そこで前年のキタサンブラック(2番枠)に続き、またも内を引き当てる強運ぶりを見せたのだ。
「良い枠を引いたので内ラチ沿いを行こうと決めました」
そう語った4000勝ジョッキーだが、当日には少し小首を傾げるシーンもあった。降ったり止んだりを繰り返した雨のせいで、大一番の直前に馬場状態が良から稍重に変更となると、冗談を交え、次のように語った。
「実際、少し内が荒れ気味になっています。こうなったら内ラチを飛び越えてショートカットしようかな……」