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川口能活×楢崎正剛「未来のGKへ」
レジェンド守護神対談完全版・後編
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/06 11:30
終始和やかなムードだった川口能活と楢崎正剛の対談。彼らの思いはこれからの守護神へと受け継がれる。
トルシエ時代の「緊張感」。
――'14年ブラジル大会は、2人が日本代表にいない初めてのW杯でした。
川口 初めて自分が、日本代表をテレビで応援するW杯だったから、すごく新鮮だったし、「こうやって盛り上がってるんだ」って驚きました。
楢崎 そう! 周りはこうやって見ていて、テレビもこうやって取り上げているんだ、こんなに注目されてるんだって。
川口 ワイドショーとかね。'02年の日韓大会のときも国内にはいたけど、隔離されていたからね。
楢崎 外の情報はシャットアウトされていたもんね。
川口 いろんな人がW杯を語るんだなって(笑)。テレビ番組の司会者の方が、日本代表のユニフォームを着ていたり。新鮮でしたね。
楢崎 あれだけ盛り上がっていることを知った上でプレーしたら、もっと緊張したかもしれない。こんなにみんな観ているんだったら、「もっとちゃんとせなあかんかったかな」って(笑)。
――ブラジルW杯は、2大会連続で川島永嗣選手が全試合にフル出場しました。裏を返せば、おふたりの関係性のように切磋琢磨するライバル選手がいれば、より成長できるんじゃないかとも感じます。
川口 そればっかりは、監督が選ぶことですからね……。
楢崎 難しい問題ですね。1人でああやってポジションを守るのも、すごく難しいことですからね。
川口 1人で守り続けるのも大変だし、競うのもエネルギーを使う。永嗣が1人で守り続けることで日本のGK全体のレベルと選手層が上がってくれば、「ああ、永嗣に任せてよかった」となる。そこはまだ、様子を見てみないと分からないですね。
――GKは、監督の好みによってどの選手をゴールマウスに立たせるかも変わります。今までの監督で、「GKに求めること」が意外だった人は?
楢崎 代表の場合は、クラブでやっているプレーを見て選んでいるから、GKとして「ああやれ、こうやれ」と指示されることは少ないですけど、あえて言うなら、トルシエさんは何を考えているかわからんかった(笑)。でもシンプルに、「アグレッシブさ」はすごく求められていましたね。
川口 でも、僕はトルシエのときが一番、「やっているな」「代表に来ているんだな」って感覚はありましたけどね。トルシエのときが一番、充実してなかった? 充実というか、緊張感があって、マンネリがない。常に「代表チームとしてのあり方」を意識して、組織化されていた気がする。たしかに正剛が言うように、何を考えているかはわからなかったけど(笑)。それが逆に新鮮だったというか、キャラクターも強烈だったしね。