オリンピックへの道BACK NUMBER
怪我で棄権の勧めを断った宇野昌磨。
「僕の生き方です」と言い放ち、優勝。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2018/12/27 16:30
フリーの最後、思わず出たガッツポーズ。全日本フィギュアは、自分を信じ切れてなかった己との戦いでもあった。
「地上を歩けるなら出ようと思った」
その真意を、あらためて本人が説明してくれた。
「僕はどうしても、無理してもどの試合も休みたくない。大きい試合でも、小さい試合でも。
B級とかだったら出なかったかもしれないけれど、全日本でしたし、大きくまとめるとプライドですかね。地上を歩けるなら出ようと思っていました」
結果、優勝をつかんだが、それでも試合後、樋口コーチは緊張の抜けない面持ちで語った。
「ホッとしました……後に響いたらどうしようという思いもありました。ホッとしたのと、(怪我のまま無茶をして)いい加減にしろ! という思いも正直あります」
でも、言っても聞かないから。
そんなニュアンスも表情ににじませた。
自分を信じることができた理由。
それにしても宇野は、どこかしら身体に不安があるとき、それを打ち消す好演技を見せてきた。
「何も不安なところがないと、自分の練習や調子に対して不安が出るんじゃないか、違うところに不安があると気持ちがそっちにいくんじゃないかと思います。
今回、いちばん大きい不安が怪我でした。怪我しているからこそ練習や自分の演技を信じることができました」