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劇場に響く「WE WILL ROCK YOU」。
フェンシング日本一決戦の超演出。
posted2018/12/11 07:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Sho Tamura/AFLO SPORT
スポットライトに照らされたステージ。場所は、東京グローブ座。クイーンの「WE WILL ROCK YOU」をバックに、華々しく登壇する12名の選手。
一見するだけではおそらくわからないだろう。間もなく始まるのはシェイクスピアの演劇ではなく、フェンシング全日本選手権のファイナルマッチだ、ということを。
見に来てくれる人だけでなく、あの舞台に立つ選手も、きっと誰もが驚くはずだ。
大会前日の記者会見でフェンシング協会会長、太田雄貴はこう言った。
「こう来たか、そもそもこれはスポーツなのか、と思う人もいるかもしれない。この舞台で選手には最高のパフォーマンスを出してもらい、運営側としては最高の演出をする。最高のエンターテイメントとしての姿を、フェンシングを通して伝えたいと思っています」
グローブ座でフェンシングを。
東京五輪のフェンシング会場を満員にする。
そのためにはまず、全日本選手権から多くの人が「フェンシングを見に行こう」と足を運んでくれるような環境づくりに努めなければならない。そのために何ができるのか。試行錯誤しながらも行動する。それが昨年8月に太田の会長就任以後、努めた改革だった。
一昨年までは各種目の予選や決勝が1日の中で行われていたが、昨年からはすべての決勝種目を最終日に集約させた。会場を暗転させライトアップする演出や会場DJによる実況など、関係者ばかりでなく初めて見に来た人も楽しめる要素を積極的に取り入れ、前年まで約150名だった観客数が1500名まで増えた。
1つの段階をクリアしたら次のステージへ。今年は集客数を増やすことに目を向けるのではなく、チケット単価を上げ、質の向上を第一に掲げた。そこで会場を駒沢体育館から決勝のみ東京グローブ座に移し、劇場でフェンシングを開催する。
単に話題性を高めることも1つの狙いではあるが、それだけではない。照明が完備された劇場でフェンシングを行うことでコストカットにもつながる利便性もあり、前日からリハーサルも行うことが可能になるため音とテクノロジーを融合させた華やかな演出の質も高まる。