オリンピックへの道BACK NUMBER
柔道73kg級に還ってきた大野将平。
「相手がどうこうより自分の柔道」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/12/02 11:00
左の“引き手”の磨きをかけた大野将平(右)、井上康生代表監督も「新たな技術が備わった」とコメント。
「相手がどうこうより、自分が突き抜ける」
「73kg級は、大野将平の階級だと、この大会で見せつけたい」
そんな思いとともに戦っていたという。
しかし、それ以上に大野らしさを感じたのは、試合後に語った言葉「自分の柔道をいかに成熟させるか」である。
リオ五輪ののち、大野はこう振り返っている。
「心技体、全部で差をつけないといけないという思いはありました。相手がどうこうより、自分が突き抜ければ、と」
その言葉ともどこか通じる部分がある。他者がどうあれ、自分の強さを突き詰めていけばよい、そう考えているのだ。
自らに厳しい姿勢は大野の強さの支えとなっているし、グランドスラム・大阪での言葉は、変わらずその思いを貫き通していることを物語っている。そう確認できた大会でもあった。
五輪代表を争う戦いはまだ続く。
そして大野の強さを引き出したのは、海老沼にほかならない。柔道の私塾「講道学舎」の後輩である大野を相手に、引くことなく積極的なスタイルを貫いた。敗れはしたものの、2人の戦いが名勝負になったのも海老沼の存在があってこそだ。
海老沼は昨夏73kg級に階級を上げ、今年で2年目。おおよそどの大会でも上位の結果を残し続けているし、今大会であらためて存在感を示したと言ってよいだろう。
「僕がオリンピックを目指すには、勝って勝って行くしかない」
新たな階級で、3度目の大舞台を見据える。
自負と求道心とともに、あらためてこの階級の第一人者であることを知らしめた大野、その姿を追う海老沼。
2人の実力者をはじめとする73kg級は、五輪代表の座をめぐり、今後も激しい争いが繰り広げられていく。