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イングランド代表はドイツで育つ!?
プレミアから流出する若き代表選手。
 

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フィリップ・オクレール

フィリップ・オクレールPhilippe Auclair

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photograph byEtienne Garnier/L'Equipe

posted2018/11/27 08:00

イングランド代表はドイツで育つ!?プレミアから流出する若き代表選手。<Number Web> photograph by Etienne Garnier/L'Equipe

アーセナルからのレンタル先・ホッフェンハイムで圧倒的活躍を見せているリース・ネルソン(右から2人目)。

サンチョの成功例を見習う若手達。

 2017年にU-17ワールドカップを制覇した21人のうち、所属するクラブでレギュラーポジションを確保しているのはサンチョひとりだけである。ここ数十年のイングランドで最も才能溢れる世代――いわゆる黄金世代の展望としては、悲観的と言わざるを得ない。

 ただ、同時にサンチョのケースが、他の若手たちを勇気づけているのも間違いない。

 ここ最近では、ネルソン(ホッフェンハイム)はじめチマ・オコロジ(フライブルク)、ダニー・コリンジ(シュツットガルト)、デンゼル・ボードゥ(ドルトムント)、マンデラ・エグボ、キーナン・ベネッツ(ともにボルシアMG)と6人の若手がドイツに新天地を求めている。

 問題は、ガレス・サウスゲイト代表監督が杞憂する国内の空洞化状況がなぜ生じたかである。

 あるサッカー研究機関がひとつの解答を示した。

近視眼的な起用目立つプレミア。

 プレミアリーグでは短期的な結果が求められ、そのためにはフィジカル能力の高い選手が優先的に起用されるために、ほとんどの場合それは外国人選手となってしまうのである。

 '16~'17シーズンでいえば、リーグ戦全プレー時間のうち61.2%を外国人が占めている。ビッグクラブになるほどその割合は高く、チェルシーは78.4%、マンチェスター・シティでは何と90.4%となっている。

 問題はこのふたつのクラブが、イングランドで最も優れたアカデミーを持っていることである。

 それはチェルシーの若手たちが、ヨーロッパに旅立つ前にいかにイングランドで大成功を収めたかを見れば十分である。彼らは'14~'18年の間にユースリーグとU-18プレミアリーグを2度ずつ制し、FAユースカップも5度獲得したのだった。

 イングランドのU-17ワールドカップ優勝の立役者で、大会MVPにも選ばれたフィル・フォデンは、すでにマンチェスター・シティでプレミアリーグとチャンピオンズリーグに出場している。

 グアルディオラにその才能を絶賛されるフォデンはチャンスに恵まれたのに対し、同じく同大会の得点王に輝いたリアン・ブリュースターはリバプールでいまだに1分の出場機会も得ていない。しかも彼は、シティやチェルシーの若手たちのように、ヨーロッパのクラブで出場の機会を求めることすらできないのだった。

 ちなみにシティは23人がレンタル移籍でヨーロッパ(主にオランダ)のクラブでプレーし、チェルシーはシティほどではないにせよそれでも19人が現在ヨーロッパでプレーしている。

【次ページ】 全員成功するわけではないが……。

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