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スピードスケートに不可欠の土台、
開西病院と十勝地方の幸せな関係。
posted2018/11/23 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Kyodo News
今年2月の平昌五輪で、日本勢が金銀銅メダルを量産したスピードスケート。その新しいシーズンが、11月16日から18日まで開催されたワールドカップ帯広大会から本格的にスタートした。
会場の明治北海道十勝オーバルは十勝地方からの観客を中心に超満員。高木菜那&美帆姉妹や、小平奈緒らに声援が降り注ぐ中、ともに大きな声援を受けたのがソチ五輪出場のベテランスプリンター辻麻希(開西病院)だった。辻は女子500m初日に3位となって表彰台に上がり、同種目の2日目も7位と存在感を示した。33歳になってなお世界のトップと争う姿は、会場のボルテージを大いにアップさせた。
このとき、辻を優しい目で見守っていたのが、医療法人社団博愛会開西病院の細川吉博理事長。「開西病院スケート部」が辻の所属チームである。
小平奈緒と言えば「相澤病院」。
平昌五輪では、選手団主将を務め、女子500mで金メダルに輝いた小平の所属先が長野県の「相澤病院」であることが注目を浴びた。スポーツ選手の所属先と言えば、宣伝・広告の役割を期待する企業が一般的で、所属先はスポンサーとして見られることが多い。そのため、病院が所属先というのは、意外だと思われたようだ。
ただ、スピードスケート界では「病院」は以前からなじみのあるものだった。それは、'06年4月に発足し、以後現在に至るまで、13年間に渡って五輪や世界選手権、ワールドカップの舞台に選手を出し続けている開西病院というチームがあるからだ。
北海道帯広市にある同病院に、医師であり経営者であり、'06年にチームを立ち上げた細川理事長を訪ねた。そこには地域に対しての責任感、スケートへの思いがあふれていた。
「真冬には氷点下20度以下になることも珍しくない帯広では、元々スピードスケートが盛んでした。地域の小中学校では毎年12月になるとグラウンドに水を撒き、天然リンクをつくっていました。冬は毎日スケートで滑って遊ぶというのが十勝の子どもたちの日常。温暖化している昨今は、1月中くらいしか凍らないのですが、以前は12月から3月まで天然リンクで滑ることができました」