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JCのアーモンドアイに死角はあるか。
過去から浮かぶ優勝馬の条件は……。
text by

江面弘也Koya Ezura
photograph byMasumi Seki
posted2018/11/22 07:00

牝馬三冠を達成したアーモンドアイ。JC制覇となれば3歳牝馬ながら最強の座につくことになる。
3歳牝馬が苦戦してきたJC。
過去、3歳牝馬で1番人気になったのは3頭いる。いずれも外国馬だ。
最初は'83年のハイホーク。3連勝でローマ賞(当時のイタリアはまだレベルが高かった)に勝った馬で、競馬の母国イギリスから初参戦ということで人気を集めていた。馬主はドバイのシェイク・モハメド。プライベートジェットで競馬観戦に来た「アラブの王子様」は写真週刊誌にも撮られたが、愛馬は13着に大敗した。優勝したのは前年4着だったアイルランドの5歳牝馬スタネーラ(3番人気)。
2頭目は'92年のユーザーフレンドリー(イギリス)。凱旋門賞で首差の2着に負けるまで6戦無敗(GI4連勝)、ヨーロッパの年度代表馬にも選ばれた歴史的な名牝は、遅いペースに折り合いを欠いて6着に負けた。勝ったのはトウカイテイオー(5番人気)。春秋の天皇賞で屈辱を味わった日本のエースの復活だった。
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3頭目はその19年後、'11年のデインドリームである。凱旋門賞を5馬身差で制したドイツのスーパーヒロインも6着に終わった。勝ったのはブエナビスタ。1位に入線しながら直線の斜行で2着に降着になった前年のジャパンカップから6連敗という、長く苦しいトンネルから脱出した。
勝ったのはジェンティルのみ。
日本の3歳牝馬は'89年の“南関東三冠馬”ロジータ(15着)を含めて16頭が出走し、勝ったのは'12年のジェンティルドンナ(3番人気)だけである。2着は'96年のファビラスラフイン(7番人気)と'13年のデニムアンドルビー(7番人気)、3着には'09年にレッドディザイア(6番人気)がはいっている。ノーマークの気楽さと軽い重量を生かして健闘したかたちだ。
その一方で、人気を集めた3歳牝馬は、ジェンティルドンナ以外は馬券の対象にもなっていない。'07年のダービー馬ウオッカ(2番人気)は4着、'14年のハープスター(2番人気)も5着、そして'15年のミッキークイーンは3番人気で8着だった。このとき勝ったアドマイヤムーン、エピファネイア、ショウナンパンドラは天皇賞・秋、6、6、4着からの巻き返しだ。
そういう意味で、アーモンドアイにとってのジャパンカップは、ジェンティルドンナ──牝馬三冠のあとジャパンカップ連覇、ドバイシーマクラシック、有馬記念と7つのGIを勝った最強牝馬──に並べるか、あるいは超えていく馬なのかを問われるレースにもなる。