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外国人騎手の寡占状態を考える。
優れた技術に、馬主の意向も影響。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/11/15 07:30
11月11日の京都競馬場、11R終了時点で勝利騎手はすべて外国人騎手だった。この現象をどう理解すべきなのか。
誰が悪いわけでもないのだが……。
1人目の200勝ジョッキーである武が'10年春に長期休養を余儀なくされる落馬事故にあい、しばらく調子を落としていたことも、現在の日本人騎手の存在感低下につながった。サンデー旋風と関西馬旋風に乗って時代を築いてきた武だったが、タイミング悪く'10年代のノーザンファーム旋風に乗りそこね、外国人騎手の台頭を許すことになった。
今、重賞出走馬の半数がノーザンファーム生産馬という状況は珍しくなくなった。言わずもがなだが、これはノーザンファームが企業努力をつづけてきた結果であって、何も悪いことをしたわけではない。
強い馬にいい騎手を乗せている。それだけのことなのだが、そう言ってしまっては身も蓋もない。
確かに、ルメールもデムーロも上手い。が、日本人にもいい騎手はたくさんいる。
武はディープインパクトに乗っていたころとフォームこそ異なるが、それは「衰え」ではなく「変化」であり、今でもスタートの技術やステッキワークは世界一だろう。
武の新人最多勝記録を更新した三浦皇成は、新聞のインタビューでデムーロが「馬乗りの素質に嫉妬を覚える」とコメントしていたほどの才能の持ち主だ。三浦がデビューしたのと同じ'08年に大井からJRAに移籍した内田博幸のペース判断とコース取りの巧みさ、そして馬を動かす技術も間違いなく世界レベルだ。
日本人騎手の存在感が薄まりすぎれば、競馬人気が落ちることもあり得るだろう。
「モレイラの何をテストするのかな?」
しかし、これは日本の競馬界がさらに進化していく過渡期の一時的な現象かもしれないし、そもそも、優勝劣敗が当然のプロスポーツで、国籍にこだわること自体がナンセンスだという反論もあるだろう。
それに関して、モレイラがJRAの通年騎手免許試験に落ちたときは、日本人騎手贔屓の筆者も驚いた。あるGIトレーナーは「JRAはモレイラの何をテストするというのかな?」と疑問を呈した。
確かに、普通テストや試験というのは、その人の職能が水準に達しているかどうかを判定するために行われる。モレイラは、達しているどころか、突き抜けている。前出の調教師はこうつづけた。
「日本語の能力で落とされたのでしょうが、エンゼルスが大谷翔平に英語のテストをしますか? 日本語ができるのにしゃべらない騎手のほうが問題でしょう(笑)」
モレイラがJRAの通年免許を取得したら、年間700鞍か800鞍に乗り、150勝から200勝ほどして、2、3着も100回ほどになる可能性は充分ある。ほかの騎手は、それだけの勝ち鞍と賞金を得る機会を失うわけだが、はたしてそれが日本の騎手界全体にとってマイナスとなるのか。今の傾向からすると、モレイラは主にルメールとデムーロのパイに食い込むことになるだろう。