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エディー「ジャパンを痛めつける」
恩師お得意の心理戦に日本の反応は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2018/11/17 09:00
エディー・ジョーンズ。味方だとこれほど頼もしい監督はいないが、敵に回すとこれほど恐ろしいとは。
オールブラックスに突かれた弱点。
取材を進めるなかで、日本代表とイングランドの、試合へのアプローチに大きな違いがあることが浮かびあがってきた。
ジャパンは11月3日にニュージーランドのオールブラックスと戦った後から、「ブレイクダウン」を強調した練習を行ってきたという。
この試合でオールブラックスの選手たちは、日本の素早い球出しを防ぐため、タックルに入った選手がそのままボールに絡むことが多かった。反則すれすれのプレーもあったが、レフェリーの傾向を分析し、ぎりぎりのプレーをオールブラックスは仕掛けてきた。
黒衣軍の老獪なプレーに対応できなかった日本は、イングランド戦に向けて、このエリアを「重点課題」として解決に取り組んできたわけだ。
アタックではボールに絡まれた場合の2人目の選手のスピード、寄りがポイントとなりそうで、それを見越してFLにあえてサイズの小さい西川を起用したと思われる。とにかく「スピード」と「下への働きかけ」が生命線になるだろう。
エディーに散々絞られた山田は。
一方のイングランドはどうか。
ジョーンズ氏は相手を徹底的に分析することから戦略を練る指揮官だ。
先週はオールブラックスと戦い、15-16と惜敗したものの、相手FBの身長が低いと見て、徹底的に空中戦を仕掛けて、前半途中に15-0とリードを奪ったのは見事だった。
自分がサントリー、日本代表で指導した選手たちが数多くいることからも、丸裸にされていると思った方がいい。
弱点と思われるエリアは、スクラム、ラインアウトをはじめとしたセットプレーはもちろん、ブレイクダウン、そしてキック処理など多岐にわたる。果たして、ジョーンズ氏はどこに焦点を絞ってくるだろうか。
考えれば考えるほど、日本には不利な条件が揃っていると言えるが、日本の選手たちはいたって穏やかだ。エディーさんから散々絞られた山田は、「イングランドでエディーさんに厳しくされている選手がいたら、僕に相談に来て欲しい」と報道陣を笑わせてから、
「相手のヘッドコーチがたまたまエディーさんというだけです」
といなす姿勢を崩さなかった。