野球のぼせもんBACK NUMBER
悲劇のエース・山下亜文は諦めない。
トライアウトを経て吉報は届くか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2018/11/14 12:10
自らの野球人生を「負けっぱなし」と語る山下亜文。復活のチャンスは与えられるのだろうか。
トライアウト熱は過熱し、早朝から列。
近年のトライアウトは、選手の為というよりも野球ファンの秋の一大イベントと化している感がある。2年前の甲子園開催では1万2000人のファンが詰めかけた。昨年のマツダスタジアムやそれら以前の静岡・草薙でも5000人以上が来場したという。
タマスタの収容人数は3113人しかない。ファン心理は過熱する一方で、今回も前日の夕方から入場口の前に列ができ始めたという。まだ辺りが真っ暗な朝6時には数十人規模に膨れ上がり、日の出とともにその列は伸びていく一方だった。
今回のトライアウトでは初めて有料入場チケットが販売された。約1400席がそれに該当し、その他に関係者席が約300席、残る約1400席が無料エリアとして開放された。無料エリアの入れ替わりが生じたために、来場者は延べ人数で5536人だったと発表された。
トライアウト見学の有料化に賛否はあるかもしれないが、担当球団であるソフトバンクの関係者は「遠方からお越しになる方もいらっしゃいます。そのような方がスタンドに入れないことがないように、事前にチケットを販売する事になりました」と説明した。
通常価格は800円だが、各球団のファンクラブに入会していれば300円で買えた。ソフトバンクでは宮崎春季キャンプでも同様の試みをすでに実践しており、おおむね好評を博しているという。
「安心に対価を払う」「より良い待遇を受けるため」といった趣向はここ数年で社会に随分と浸透してきたことを球界サービスの中からも感じることが出来るようになった。
昨年は51名中3名にオファー。
午前10時過ぎからスタートしたトライアウト。投手29名、野手19名の計48名が力の限りのアピールを披露した。だが、過去の事例から分かるように現実は厳しい。昨年は51名が受験してNPB球団から獲得オファーがあったのは3名のみ。一昨年は65名中3名だけだった。狭き門である。
ただ今回、ひと際、目を惹いた投手がいた。
普段から身近に取材する選手なのだが、こんなに強いボールを投げ込めるのかと改めて驚いた。
前ソフトバンクの左腕投手、山下亜文だ。