“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「本当はFWをやりたかったけど」
ある高校生GKの怪我と敗北と友の涙。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/11/11 08:00
帝京長岡高校に敗北直後の日本文理の選手たち。松葉杖が相澤、背番号3が千葉。
本当は「FWをやりたかった」。
「FWをやりたかったし、嫌だった」(相澤)
最初は受け入れられなかったが、2016年度の高校選手権の開幕戦で、関東第一のGK北村海チデイが途中出場からビッグセーブでチームを勝利に導いた姿を見て、「自分もチームを勝利に導くGKになりたいと思ったし、嫌だという気持ちは一切無くなった」と転向を決意。
そこからは身も心もGKとなるべく、徹底的にトレーニングを積んでいった。
「今までFWをやっていて、後ろに人がいるのが当たり前の環境だったので、最初GKに移ったときはシュートを止めることに必死で、何がなんだか分からなかった。でも、徐々にその奥深さが分かってきました。
『後ろにみんないる』と『誰もいない』では全然違いますね。GKはミスが勝敗に直結する。FWは多少ミスをしても大丈夫だけど、GKだと1個でもミスをしたら決められる。それは怖いと感じました」
戸惑いながらも、彼はスポンジのようにGKとしての技術をどんどん吸収していった。
2017年度の夏のインターハイ時点ではまだメンバー外だったが、高校選手権の地方予選からレギュラーの座を掴むと、高校選手権初出場に大きく貢献し、本戦でもファインセーブを連発してベスト8進出の立役者となった。
無名の存在からプロ注目のGKへ!
「(2017年度の高校)選手権で人生が変わったと思っています。選手権で僕を観てくれる人も増えましたし、プロが決まったのも選手権がきっかけだと思っています」
まったくの無名の存在から、プロが注目するGKへ――。
今年8月にはU-18日本代表にも選出されるなど、たった1つの大会で彼を取り巻く環境は劇的に変化したのだ。
「自分のプレー1つひとつで、周りの評価がどんどん変わってきていることを実感していて。逆に、チームが勝利できなかったら当然のように周りから言われますし。それは覚悟していました」
注目されるプレッシャーの中でプリンスリーグ北信越、インターハイ予選を戦ったが、チームは大苦戦。リーグ戦でも思うように勝ち星を挙げられず、インターハイ予選も準決勝で新潟明訓に敗れた。
そんな中でも、相澤は9月6日にジェフユナイテッド千葉への加入内定が発表され、あとは最後の高校選手権に向けて全力を尽くすのみだったが……千葉入り発表の翌日、9月7日の練習中にアクシデントが起こる。
紅白戦でシュートストップに行った際、右足を負傷。
激痛が走った。