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世界中の競馬ファンが熱狂する、
メルボルンカップの悲喜こもごも。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2018/11/09 16:00

世界中の競馬ファンが熱狂する、メルボルンカップの悲喜こもごも。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

メルボルンカップを勝利したクロスカウンター陣営。向かって左端がC・アップルビー調教師。

最後の望みをかけての出走。

 ところがレース4日前、事態は急転する。この日の朝、最終追い切りを終えた後、獣医に診断された同馬にドクターストップがかかってしまったのだ。

「残念だけど仕方ない」

 そう語るダンロップ調教師は、レッドカドーが、レッドヴァードンが最悪の事態にならぬよう手を打ってくれたと考えた事だろう。

 24頭の出走馬はレーティングと出走権を懸けたレースなどで決められるが、今年ギリギリのところで出走権を手にしたのがイギリスからの遠征馬アプリンスオブアランだった。

 同馬は地元ヨーロッパでは重賞勝ちがなく、現地に乗り込んだ後、レーティングを上げようと1レースに出走。しかしそこで3着に負けたため、崖っぷちに立たされた。

 最後の望みをかけて出走したのは、メルボルンカップ3日前の土曜日に行われるレクサスS。中2日で本番を迎えるというのは日本的には考えられないが、このレクサスSは勝ち馬にメルボルンカップの出走権が与えられる立派なトライアルレース。事実、毎年ここの勝ち馬はメルボルンカップに出走するのだ。

 ただし、アプリンスオブアランの場合、地元オーストラリアの馬ではない。実際、管理するチャーリー・フェローズ調教師は「もしレクサスSを勝てたとしても、中2日での競馬はやった事がないのでどうなるか分からない」と口にしていた。

3頭全てが怪我してしまう不運。

 しかし、その“もし”が起きた。アプリンスオブアランはレクサスSを勝利し、メルボルンカップの出走権を手に入れたのだ。

 これが厩舎開業5年目での嬉しい重賞初制覇となったフェローズ調教師は興奮気味に言った。

「この勝利は私にとってダービー勝ちのようなもの。この後のメルボルンカップはボーナスだと思って楽しみます」

 こうして中2日で大一番に駒を進めたアプリンスオブアランは、なんと直線で1度は先頭に立つ競馬。最後はかわされてしまったが、見せ場充分の3着に好走したのだ。

「勝ったかと思えただけに残念だけど、よく走ってくれました。上出来です」

 フェローズ調教師はそう言って愛馬の労をねぎらった。無欲の挑戦が好結果に結びついたという事だろう。

 勝利したのはこれもまたイギリスからの遠征馬クロスカウンター。同馬を管理するチャーリー・アップルビー調教師は、本来このメルボルンカップに3頭を出走させるつもりで現地へ送り込んだ。

 しかし、不幸な事に3頭全てが怪我をしてしまう。しかもそのうち1頭は予後不良となる最悪の事態。当時の厩舎の雰囲気が暗かったであろうことは想像に難くない。

【次ページ】 クロスカウンターの栄冠。

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