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支えてくれた恩人にダービーを――。
武豊、キズナの鞍上で期する思い。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2013/05/23 10:30
前走の京都新聞杯(5月4日)では、最後方待機から直線で異次元の末脚を見せ勝利を収めたキズナ。手綱をとる武豊は、キズナの父ディープインパクトとのコンビで勝利して以来、8年ぶり5度目のダービー制覇を目指す。
今週末の5月26日、“競馬の祭典”東京優駿(日本ダービー)が開催される。日本馬のレベルを世界水準に引き上げるべく、本場イギリスのダービーに範をとって1932(昭和7)年に始まったこのレースは、戦争による2度の中止を経て、今年80回目を迎える。
生涯に一度しか出られないオンリーワンチャンス。18頭の精鋭が、ダービー馬の栄誉と1着賞金2億円を手にすべく、東京芝2400mの舞台で激突する。
節目のダービーを制するのはどの馬か。
ほかのどの馬にもない「二冠獲り」の権利を持っているのは、皐月賞馬ロゴタイプ(父ローエングリン、田中剛厩舎)である。この馬は朝日杯フューチュリティステークスも勝っており、'94年のナリタブライアン以来、朝日杯の勝ち馬としてクラシックを制覇した。ブライアンはダービーと菊花賞も勝って三冠馬となり、その勢いで同年の有馬記念も圧勝した。
朝日杯とクラシックの両方を勝つ馬がこれだけの長期間現れなかったのはそれだけ難しいからで、見事にやってのけたロゴタイプは、ブライアンの域に近づきつつあるのかもしれない。
ロゴタイプを駆るのは弱冠20歳のクリスチャン・デムーロ。
この馬は、父がマイルで強かったローエングリンということもあり、距離を不安視されていた(というか、GI勝ちのない種牡馬の産駒なので、大舞台を勝ち切る力そのものを疑問視されていた)。ところが、朝日杯の1600mからスプリングステークスの1800m、そして皐月賞の2000mと、200mずつ距離が延びるごとに、不安を払拭するどころか、さらに強い競馬を見せている。
皐月賞を勝たせた鞍上はミルコ・デムーロだが、短期騎手免許の都合で、ダービーでは弟のクリスチャン・デムーロが手綱をとる。まだ20歳。正確には20歳10カ月なので、もし勝てば最年少の前田長吉(20歳3カ月、1943年クリフジ)、井川為男(20歳6カ月、1935年ガヴアナー)に次ぐ、史上3番目の年少制覇記録となる。
デムーロ兄弟が口をそろえて最大のライバルと言うのが、史上最多のダービー5勝目を狙う武豊を背にするキズナ(父ディープインパクト、佐々木晶三厩舎)である。