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世界中の競馬ファンが熱狂する、
メルボルンカップの悲喜こもごも。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2018/11/09 16:00

世界中の競馬ファンが熱狂する、メルボルンカップの悲喜こもごも。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

メルボルンカップを勝利したクロスカウンター陣営。向かって左端がC・アップルビー調教師。

クロスカウンターの栄冠。

 しかし、そんな中から唯一クロスカウンターだけが戦列に復帰を果たした。

「外傷を負った左前脚はすっかり完治。追い切りも予定通りに出来、良い状態でレースに臨めます」

 そう語ったのはアップルビー厩舎の遠征主任として3頭の遠征(実際には他のレースに出走する馬が別に3頭いたので計6頭)に常に寄り添っていたクリストファー・コネット氏だ。

 調教中は毎朝、4肢にバンデージを巻かれた同馬だが、競馬では怪我が癒えた事を表明するようにすっきりと何も巻かずに出走。24頭立ての最後方24番手から進みながら末脚を炸裂。見事に栄冠を勝ち取ってみせた。

「困難を乗り越えれば、私達はまた強くなれると、苦しい時に語りました」

 アップルビー調教師はレース後にそう語った。正に彼等がまた一段と強くなれたであろう勝利だったわけだ。

「勝ったらTバックを……」

 最後にマジックサークルという馬の話を記そう。

 イギリスからの遠征馬であるこの馬の馬主、ドクター・M・クーカシュ氏はその言動や行動から名物馬主の1人として知られている。

 今回のメルボルンカップでも、事前のインタビューで次のように答えた。

「勝ったらTバックを履いて表彰式に出ます」

 実は、前々走のチェスターカップの際にも同じ発言をしていた。しかし、実際には同レースを勝った後、当然そんないで立ちでは表彰式に出ていない。この点を聞かれた彼は、真顔で言った。

「イギリスはセキュリティーが厳しかった。今回は本当にやる!!」

 更に、そんな事をしたら夫人に離婚を申し渡されるのでは? と問われた時にはこう答えた。

「そうなるだろうね。でも、メルボルンカップを勝つのと新しいワイフを探すのでは、ワイフを探す方が簡単だよ。だからメルボルンカップを勝ちたいし、勝った際には本当にやるよ!!」

 結局、マジックサークルは16着に敗れた事で、表彰式での珍場面はお預けとなったが、こんな冗談の中にも、いかにメルボルンカップが憧憬の的となり得るレースであるかが分かる事だろう。

 州の祝日となり、世界中から集った馬に、多くのファンと関係者が熱狂する。こんなレースが日本にもあればなぁ……と思わずにはいられない。それがメルボルンカップというレースなのだ。

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