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中堅ジョッキーと、200万円の馬券。
菊花賞を巡って展開された人間模様。
posted2014/10/31 10:30
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
Kyodo News
菊花賞の馬券は、レース前々日の金曜日から前売りされる。今年の前々日、24日金曜日の前売りオッズを見て驚いた。トーホウジャッカルが単勝1.4倍の1番人気に支持されていたのだ。
トーホウジャッカルはトライアルの神戸新聞杯で3着に健闘した馬である。それを評価して、有力馬の1頭にあげる評論家、新聞もあった。とはいっても、ダービー馬でトライアルも勝ち、1番人気確実と予想されていたワンアンドオンリーを差し置いて断然人気といってもよい単勝オッズ1.4倍に支持されるとは意外だった。
今は一度の購入にどれくらいの金額が使われたかがわかるようになっている。あとで知ったことだが、金曜の夕方の時点で、トーホウジャッカルにはおよそ200万円のまとまった投票があったそうだ。誰がどんな意図で買ったか、想像を膨らませる金額である。
1985年の有馬記念で見た、200万円の1点勝負。
実は、目の前で200万円の1点勝負に出る人を見たことがある。
シンボリルドルフが勝った1985年の有馬記念。窓口に並んでいたら、隣の客が帯封をふたつ取り出してシンボリルドルフとミホシンザン、1番人気と2番人気の組み合わせを1点買った。時代はバブルに向かいはじめたころで、大口購入も珍しくはなかったが、目の前で帯封ふたつを見せられると、さすがにびっくりした。
レースはその帯封男の馬券の通りに決着した。オッズ1.6倍だったから200万出して320万戻ってきた計算になる。
今年の菊花賞の200万単勝勝負は有馬記念の1点勝負に比べると、かなりの冒険だった。最終的にトーホウジャッカルは単勝オッズ6.9倍の3番人気に落ち着いた。これでも春に実績が全くないことを考えると、少し人気になりすぎではと疑いたくなる評価だった。
だが、200万馬券の購入者の見立ては正しかった。
2番枠に入ったトーホウジャッカルはすばやく先行集団につけると、終始距離のロスのない内ラチに近いルートを回りレースを進める。15番枠に入った1番人気のダービー馬、ワンアンドオンリーが、先行集団を見る好位置をキープするため、序盤からある程度スピードを出していかざるを得ないレース運びを強いられたのと対照的だった。