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宮本ガンバ残留へのラストピース、
アデミウソンを蘇らせた名医とは。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/12 10:30
個の力がありながら味方も活かせるアデミウソン。宮本恒靖監督にとっても心強い攻撃の駒なのは間違いない。
セレッソを撃破した芸術ループ。
オフサイドぎりぎりの裏抜けを狙い続け、カットインからの一発を持つファンは完全なるフィニッシャーだが、周囲を生かしながら相手ゴールに迫るのがアデミウソン。倉田秋は戦前、そのコンビネーションに自信を見せていた。
「1人で打開できる力が加わったことで、相手にはより脅威になる。コンビネーションプレーもアデ(アデミウソン)とは出し合えるので、そういうプレーも出して崩していきたい」
ガンバ大阪がこの試合で最初に作り出した前半23分の決定機は、ピッチ中央でアデミウソンが潰れながら繰り出したパスに倉田が抜け出したもの。そして前半45分には倉田の絶妙なパスに抜け出したアデミウソンがキム・ジンヒョンの頭上を抜く、絶妙なループシュートで決勝点を叩き出す。
「シュウ(倉田)がトラップして少し顔を上げた瞬間、僕にボールが来るのは分かっていた」(アデミウソン)
遠藤からの縦パスを受け続けて。
やはり、名手は名手を知るということだ。広島戦でもガンバ大阪が本来のパスワークを見せる時間は増え始めていたが、相手陣内でタメを作ったりスルーパスを供給したりするアデミウソンは、遠藤保仁からの縦パスを面白いように受け、攻撃に彩りを加え続けた。
「ダービーという特別なモチベーション、雰囲気もあった。それに加えてあまり、試合に出られていないというのもあったので、いつも以上に自分の持っているものを出し切りたい、チームのためにより貢献したいというところはあった」
攻撃は言うまでもなく、課題の守備面でもハードワーク。81分間のパフォーマンスは、本来エースとして活躍すべき男のそれだった。
サッカー王国でエリート街道を歩んできた逸材が自信を取り戻した一戦は、指揮官にとっても大きな意味を持つものだ。
「体のキレも感じられて、得点の匂いについても、さらに点を取れそうなところもあった。シーズン終盤にかけて、調子が上がってきてくれるのは非常に頼もしい」(宮本監督)