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宮本ガンバ残留へのラストピース、
アデミウソンを蘇らせた名医とは。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/12 10:30
個の力がありながら味方も活かせるアデミウソン。宮本恒靖監督にとっても心強い攻撃の駒なのは間違いない。
本来のアデミウソンを見せよう。
セレッソ大阪とのダービーの前日、先発が決まっていたブラジル人FWは、自らに言い聞かせるように言葉を紡ぎ出した。
「明日に限らず、今までのどの試合でも本来のアデミウソンを見せようと思ってピッチに立ってきたよ」
ブラジル屈指の名門であるサンパウロFCの下部組織育ちで、10代当時は「新しいロマーリオ」とさえ称されたこともある逸材は、昨年途中からグロインペイン症候群に苦しめられてきた。
今季も始動当初から別メニュー調整が続いたアデミウソンが藁にもすがる思いで向かったのが母国ブラジルの名医だった。
ブラジルのスポーツ医学は屈指。
クラブのあるスタッフが、柏や神戸などでプレーしたポポのグロインペイン症候群を完治させたドクターとコンタクト。長年、ガンバ大阪でフィジカルコーチを務めたルイス・カルロス・ブローロ氏の太鼓判もあって、アデミウソンは4月に一時帰国する。
当初の治療予定よりは長引いたものの、名医の腕は確かなものだった。
余談ではあるが、ブラジルのスポーツ医学は世界屈指の水準だ。今季、広島の躍進を支えているパトリックも、2016年のガンバ大阪在籍当時、右前十字じん帯と右外側半月板を損傷。サンパウロ市内の病院で手術を受け、見事に完全復活を果たしている。
「今季、まだ2ゴールなので本人も納得していないと思うし、残り試合の大事さを考えても、(ダービーを)発奮材料にしてもらいたい」
こんな思いとともにアデミウソンを先発で起用した指揮官の賭けは的中した。アウェイのヤンマースタジアム長居で、ブラジル人アタッカーは決して「代役」ではないことを証明するのだ。