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「おかえり! 高橋大輔!」
4年ぶりの滑りは幸福感に包まれて。
posted2018/10/09 12:15
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
「きつかったー!」
試合後の取材を終え、引き上げながら叫んだひとことは、心の底からの思いだったに違いない。
10月8日、近畿選手権を終えた高橋大輔のその言葉は、しかし、文字に起こした印象とは異なるニュアンスが含まれていた。
今年7月、4年ぶりに現役に戻ることを発表。これが復帰戦だった。
前日のショートプログラム『The Sheltering Sky』では、冒頭のトリプルアクセルを始め3つのジャンプすべてを着氷させるなどして、77.28、首位に立つ。
迎えたフリー『Pale Green Ghosts』は、様相が違った。
「これが試合という緊張感」
冒頭のトリプルフリップ-トリプルトウループのコンビネーションジャンプは成功させたものの、続くトリプルアクセルで転倒。その後もジャンプは思うように決まらなかった。
フリーは118.54、総合得点は195.82。
結果、総合3位で復帰しての第1戦を終えた。
「最低ですね。今まで、練習でも、ここまでぼろぼろなのはなかったので。今シーズン、現役復帰してからこんなにぼろくそな演技は練習を含めて初めてでした」
開口一番に語った高橋は、こう続けた。
「これが試合という緊張感だと思うし、ショートとフリーと、2日続けてやる難しさだと思います」