フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
挑戦し続ける五輪王者、羽生結弦。
オータム・クラシックでの新境地。
posted2018/09/25 15:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
MATSUO.K/AFLO SPORT
9月20日からトロント郊外、オークビルで開催されたオータム・クラシック・インターナショナルで、羽生結弦は新プログラムを披露した。SPはジェフリー・バトル振付による『秋によせて』。フリーはエドウィン・マートン作曲『Origin/Art On Ice』で、振付はシェイリーン・ボーンが担当した。
フィギュアファンならすでに周知のように、SPのピアノ曲『秋によせて』は、元全米チャンピオンのジョニー・ウィアーが2006年トリノオリンピックのフリーで使用した音楽。そしてフリーのほうは、エフゲニー・プルシェンコが2003/2004年シーズンのフリーで使用した曲が含まれている。
羽生はこれまで尊敬するスケーターに、ウィアーとプルシェンコの名前を何度もあげてきた。今シーズンは、影響を受けた2人の先輩に対するトリビュートの意味もこめて、このプログラムに決めたことは8月のメディア公開練習の際に発表されていた。
その2つのプログラムを、彼にとっての今季初戦、オータム・クラシックで初披露したのである。
予想を裏切らなかったSPの内容。
SPは、初めて曲名を聞いた瞬間からこれは素晴らしいプログラムになるだろうと予想していたが、その期待は裏切られなかった。
羽生のよく流れるスケーティングに、きらびやかなピアノのメロディがぴったりはまっている。毎回必ずはっとさせる要素を入れてくるバトルの振付らしいお洒落な作品だ。
4サルコウ、3アクセル、4+3トウループのジャンプ要素がすべてきまった。2つめのコンビネーションシットスピンのはじめでバランスを崩しかけたが、その後に見せたステップシークエンスは、音楽の盛り上がりにのって華やかに演じきった。
結局2つめのスピンはシットスピンの条件を満たしていないという理由でノーカウントになったものの、97.74で余裕の1位に立った。
ジャンプがすべて、ボーナスポイントのない前半に入ったことについて聞かれると、羽生はこう答えた。
「あれはあれで大大丈夫。特に悔しさもない。ただぼくとしては、あの素晴らしい曲のプログラムに対してきれいな終わり方ができなくて、すごく申し訳ない。これからすごく練習を積んでいきます」
十分きれいな終わり方だったように見えたが、スピンのミスのことを指しているのだろう。