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「おかえり! 高橋大輔!」
4年ぶりの滑りは幸福感に包まれて。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2018/10/09 12:15

「おかえり! 高橋大輔!」4年ぶりの滑りは幸福感に包まれて。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

フリーが終わって、高橋大輔のこの笑顔! 次戦は11月初旬の西日本選手権で、年末の全日本選手権の出場権を争う。

夏は足の怪我で練習できず……。

 高橋はショートを滑り終えると、そのまま引き上げようとして呼び止められた。

「スコアが出るのを忘れていて、『そういえば点数、出るんだ』と思いました」

 ショートのあとにはこうも語った。

「6分間練習というのも久々だし、あとこんなに明るい中で、こういう見られ方をするのも久々で。想像以上に自分が緊張していてびっくりしました」

 フィギュアに限らず様々な競技の選手がしばしば口にするのは、実戦から遠ざかることで試合感覚を失う不安だ。練習の内容がよくても、その感覚のなさが力を発揮するのを妨げる。そして試合感覚には、スタミナも含まれる。

 スコアの件も言葉も、高橋にまだ試合感覚が戻っていないことを示していた。なにしろ、4年ぶりなのだ。

 しかも夏場には、左足内転筋肉離れを負い、計画通りに練習を重ねられなかった。

 つまり、万全とは言えない中での試合を強いられたのが近畿選手権だった。

 一方で、この2日間に見せたのは、一度引退する前と変わらぬ姿だった。

「魅入られてしまいました」

 優勝した友野一希は言った。

「人をひきつける力がすごいと思いました。彼1人で、大会の雰囲気が、がらっと変わります。自分もそういう選手になりたいと思います」(ショート後)

「まだまだ1人のスケーターとしては全然かなわないと思います」(フリー後)

 2位の中村優もショート後に、こう語った。

「6分間練習は全日本選手権みたいでした。(滑走順が)高橋選手の前でよかったです」

 やはり高橋の前に滑ったフリーでは、リンクサイドで高橋の演技を見守り、演技を終えた高橋をうれしそうに出迎えた。

「試合でモチベーションをどう持っていくのか気になっていたので……魅入られてしまいました」

【次ページ】 会場の空気を変えてしまう男。

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