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優勝目前の西武、たった1つの懸念。
「経験」の差を補う方法はあるか?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/09/25 16:30
若い西武ライオンズに「経験」の力をもたらす1人、中村剛也。彼の背中から若手たちは多くのものを吸収している。
栗山が頼れる一打を打った時の心境は?
ただ、栗山は努めて冷静に語る。
「シンプルに来た球を打とうと打席に入りました。今日負けたからって、明日がどうなるってわけでもないし、場面が終盤ならもう少しきつかったかもしれませんけど、1回裏でしたからね。まだ次もチャンスあるやろうくらいに思っていた。(ワイルドピッチという)思わぬ形で1点が入ったので、打者としては楽な気持ちだった」
そう平然と言ってのけるが、プレッシャーをものともしない立ち居振る舞いにベテランの境地を感じたものだ。
そんな栗山の一打から試合を優位に進めた西武は、5回裏には浅村栄斗、山川の連弾で4点を奪って突き放すと、8回裏には山川がシーズン40本塁打目を左中間スタンドに突き刺し、11-5と圧勝した。
天王山の3連戦で3連勝。マジックを点灯させると、続く3位・日本ハムにも連勝した。大事な局面での5連勝という体験は大いに自信につながったに違いない。
経験の価値はいつ感じるか。
秋山は5連勝の後、こう手応えを語っている。
「1試合ずつ戦っている中で『経験が生きたか』と聞かれても正直分からないです。浅村も山川も僕もそうですけど、いま、2018年の試合にずっと出ているわけで、何をもって経験なのかなというのはあります。
ただ、栗山さんや中村さんの背中を見ていて感じるのは、いろんな修羅場、正念場というんですかね。そういうのを乗り越えてやってきた人だから、『こういうときもある』と思えているのが経験なのかなと。
どうしても、初めて体験することって面喰らったりする。スランプも何回か経験すれば違いますけど、初めての時はどう対処していいか分からなかった。栗山さんと中村さんは17年間やってこられて、いろんなことがあっても普段通りやるメンタル、思考を持っているのかなと思います」
優勝争いをして勝つことはもちろん、窮地に追い込まれた経験、跳ね返した経験、返り討ちにあった経験など、普段は感じられないイレギュラーな事態こそが「経験」ということなのだろう。