野球善哉BACK NUMBER
優勝目前の西武、たった1つの懸念。
「経験」の差を補う方法はあるか?
posted2018/09/25 16:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
9回表の窮地から起死回生の逆転本塁打を放った山川穂高がダイヤモンドを一周する姿をTV画面で確認しながら、1つのヤマを乗り越えたような気がしてならなかった。
西武が天王山を含む9連戦を8戦全勝(1試合は雨天中止)で乗り切って、優勝へのマジックを「7」として、試練の1週間強を乗り切った。
追いすがる2位・ソフトバンク、3位・日ハムとの5連戦を全勝。9連戦の最後となった22日のロッテ戦では、8回裏に勝ち越しを許す苦しい展開から、主砲の一発で試合をひっくり返して締めくくったのは見事だった。
この連戦が始まる以前、西武とソフトバンク、日本ハムとの間に大きくあったのは「経験」の違いだ。
辻発彦監督は言う。
「何度も日本シリーズを経験して日本一になっているソフトバンクや日本ハムと比べて、何が違うかと言ったら経験。うちはまだ若くて発展途上のチーム」
2008年に日本一に輝いて10年が経ち、どのチームも主力選手の顔ぶれが変わる中で、西武は優勝から遠ざかってきた。2チームとの差は、経験に他ならなかった。
優勝した経験、修羅場をくぐり抜けた経験、あるいは、土壇場で優勝を逃した苦い経験――。
秋山、山川、菊池が「経験したことがない」。
2008年の主力だった栗山巧、中村剛也を除くほとんどの選手たちにとって、この9連戦のようなシーズンの正念場は「未体験ゾーン」であり、西武の不安要素でもあった。
何より、決戦を前にした選手たちが同じ言葉を口にしていたくらいだ。
1番・秋山翔吾、4番・山川穂高、エース菊池雄星。彼らが同様に「経験したことがない戦い」と話していたのは象徴的だ。
もっとも、それは「不安」を口にしていたわけではない。これから迎える「未経験の舞台」が果たしてどのようなもので、迫りくる緊張感のなか自身がどのような精神状態になるのかを今まさに手探りしているというとらえ方だった。