「飯伏プロレス工場」に変えるか。

　そして棚橋戦を経て、飯伏の中で新たなテーマも見つかった。

「僕は『飯伏プロレス研究所』所属を名乗ってきましたけど、ここ最近は、研究を進めるより、その研究の成果をかたちにする段階に来たんじゃないかと思って、『飯伏プロレス工場』に変えようかと思ってたんですよ。

　でも、棚橋さんとG1の決勝を闘ったことで、さらなる研究材料が見つかってしまったので、それをもっと研究していこうと思いますね。

　研究材料が見つかったということは、自分がさらに進化できる可能性を見つけたと言っていいと思います。ここからまた新しいものが生まれるんじゃないかと期待してるんですよ。だからG1では、自分の中に気づきがたくさんありました。準優勝という結果以上に、得るものが多かったです。

　でもそれは、棚橋さんと決勝で当たって、“あの棚橋さん”を感じなければ、気づけなかったと思う。だから、負けたけど決勝で闘えてよかったですね」

　棚橋はG1優勝後、その勢いをさらに加速させ、9.23神戸大会ではオカダ・カズチカを破り、IWGPヘビー級王座挑戦権利証の初防衛に成功。2年近く苦闘が続いていたのが嘘のように、完全復活ムードを漂わせている。

“精神のシュート”にやられた。

　飯伏は、そんな今の棚橋をこう評している。

「棚橋さんは、IWGPのタイトル戦線から離れている間もまったく焦ってなかったと思う。すべてをひっくり返すタイミングをうかがっていて、それを今年のG1で実行した。それによって一気に新たな棚橋時代到来を感じさせる空気を作ったわけですから、恐ろしいレスラーですよ。

　今回、棚橋さんが仕掛けてきたのは“精神のシュート”。僕はそれにしてやられてしまったけど、今後のプロレスは、そこの闘いにまでいくんじゃないかと感じています。その闘いは、あのG1決勝からもう始まってるんですよ。

　だから、あそこで棚橋弘至の恐ろしさを知ることができたのは、僕にとってデカい収穫でしたね。僕は他のレスラーより、それを先に知ることができた。それは大きなアドバンテージになる。これからプロレスは、もっと面白くなりますよ！」

　そう語った飯伏幸太の表情は、これから起こることへのワクワク感に満ちていた。