ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
飯伏幸太、逆オファーインタビュー。
「棚橋さんの中に“猪木”を感じた」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGetty Images
posted2018/09/30 10:00
2018年G1クライマックス優勝決定戦、飯伏幸太(左)は棚橋弘至と激闘を繰り広げた。
“棚橋プロレス”という極致。
「“アスリート・プロレス”というのは、アスリートとしての運動能力を駆使して攻撃を仕掛け、相手のえぐい技も受けてみせる。『極限まで身体を張ったものがプロレスだ』というもの。つまり、ケニーのプロレスです。
そして、この逆が棚橋さんの“棚橋プロレス”なんです。自分の身体を危険にさらすリスクを背負わなくても、観客の心を揺さぶることができる。『身体を張るだけがプロレスじゃない』というもの。いまの新日本プロレスは、その2つのイデオロギーが対立した状況にあるんですよ。
その中で僕は、ファイトスタイル的にケニーと同じ“アスリート・プロレス”だと思われてますけど、棚橋さんの考えもわかるんですよ。だから自分の中には、“アスリート・プロレス”と“棚橋プロレス”の両方があると思ってます」
「俺を継ぐ覚悟はあるのか?」
「でも棚橋さんは、あえて僕をケニーと同じ“アスリート・プロレス”であるというふうに観客に見せて、あの試合によって『おまえは、そっち(アスリート・プロレス)じゃなくて、こっち(棚橋プロレス)に来い』というメッセージを送ってきたんだと思うんですよね。
僕は棚橋さんから、これまで何度も『覚悟はあるのか?』という言葉をかけられて。そこにはいろんな意味合いがあると思うんですけど、その中のひとつに『俺を継ぐ覚悟はあるのか?』という意味もあったんじゃないかと思うんですよ。
いつまでも飛び技で沸かせるのではなく、派手でリスキーな技を使わなくても観客の心を揺さぶることのできる“棚橋プロレス”を継ぐ覚悟はあるのか、もっと言えば、『新日本を継ぐ覚悟はあるのか』という深い意味があったと思うんです。あのG1決勝でも、棚橋さんは僕に対して“そこ”を問いかけてきていた」