球体とリズムBACK NUMBER
いま、梅崎司が大きく見える理由。
「湘南で新たな野心が芽生えている」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byYoichi Igawa
posted2018/09/26 07:00
湘南ではキャプテンマークをつける機会も出てきた梅崎司。円熟のアタッカーとしてチームの屋台骨となった。
もともとサッカー小僧だから。
湘南に吹く爽快な風が梅崎を刺激し、シャープなベテランに多くの若手が触発される。現在のベルマーレには、そんな相互作用が見て取れる。梅崎が期待する若手は多いが、特に注目しているのは「齊藤(未月)、石原(広教)、杉岡(大暉)、金子(大毅)の同世代(19、20歳)の4人」。自身が唯一の代表キャップを刻んだ19歳の頃と、重なっているのかもしれない。
「元々、あいつはサッカー小僧。ここに来て、それがもう一度呼び覚まされているんだと思うよ」と指揮官は言う。
九州で生まれ育ったサッカー少年は、浦和で大人のフットボーラーになった。大観衆のなかでプレーし、高い収入を得て、小学校の卒業文集に書いた夢──母に家を買うこと──も叶えた。ただそこには抑えていたものもあった。その攻撃性がいま再び、湘南で解き放たれている。
「生き生きとしている姿を」
おそらくその姿を最も喜んでいるのは、母の庭子さんだ。
「おかんも、いまが一番楽しそうですよ。よく試合にも来てくれます。(卒業文集に書いた)夢を達成できたのはもちろん嬉しいですけど、やっぱり一番は生き生きしている姿を見せること。それが何よりの親孝行じゃないですかね」
あらためて数字にこだわり始めた31歳の攻撃者は、目標を掲げている。シーズン2桁得点、1部残留、そしてルヴァンカップ優勝。どれも簡単ではないが、厳しい挑戦こそ彼の望むところだ。
「湘南でまた、新たな野心が芽生えているんです。そういう熱が湧き上がっているのは、自分でもすごく気持ちいい。もっともっと、感情を燃やしていきたい」
チョウ監督が標榜する「感動劇場」で第二、第三の春を謳歌する梅崎司。その姿は間違いなく、これまでで一番大きく見える。