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東京五輪競泳、午前決勝の難しさ。
池江璃花子に多種目ゆえの悩み。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2018/09/18 10:30
アジア大会で6個の金メダルを獲得し、大会MVPに輝いた池江は、東京五輪でも多種目への出場が期待される。
1つの種目が3日間開催になる。
それでも大会開幕まで、不安は決して拭えなかった。例えば松田丈志を指導していた久世由美子コーチは、朝早くから練習する分だけ「試合の時間帯に眠くならないように気をつけなければいけません」と神経をとがらせていた。
北京五輪での開催時間には、日本だけでなく競泳大国のオーストラリアや欧州各国でも反対意見が出ていた。大会後、選手から「やっぱり嫌でした」という声が上がったからも、調整の難しさがうかがえる。
競泳に限った話ではない。平昌五輪ではフィギュアスケートが異例のスケジュールとなった。いつも以上に失敗が目立つ選手もおり、競技の時間帯を苦しんだ理由に挙げる選手もいた。
現在、日本代表には北京五輪を経験したコーチがいるため、当時の取り組みが蓄積されている。そういう意味では、北京五輪よりは対応するノウハウがある。それでも気になるのは、午前決勝になることで、1つの種目が3日間にまたがるケースが続出する点だ。
池江らマルチスイマーに負担が。
競泳は予選と決勝の2本のレースで済む種目もあるが、多くは予選、準決勝、決勝と3本のレースがある。その種目は1日目午前と午後にそれぞれ予選と準決勝、翌日午後に決勝と進むのが通例だ。
しかし午前決勝だとそうはいかない。1日目午後に予選、2日目午前に準決勝、3日目午前に決勝となる競技もある。影響が懸念されるのは、数多くの種目に出場する選手だ。1種目が3日間にまたがる上で複数種目を泳ぐことは、いつも以上の負担を強いられる。平井氏も「(複数の種目は)大変だと思います」と語っている。
そして現在の日本代表には、多種目で勝負できるマルチスイマーがいる。その筆頭は池江璃花子である。パンパシフィック選手権やアジア大会での活躍が象徴するように、池江は年を経て順調に階段を上ってきている。複数の個人種目はもちろん、リレー種目でも主軸として期待される選手だ。
だからこそ、パフォーマンスへの影響が心配される。