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東京五輪競泳、午前決勝の難しさ。
池江璃花子に多種目ゆえの悩み。
posted2018/09/18 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
9月12日、2020年東京五輪における競泳の競技日程が発表された。7月の段階で、決勝が午前に実施されることは決定していたが、その詳細が決まったことになる。あらためてそのスケジュールを見渡すと、「午前決勝」の厳しさが浮き彫りになった。
競泳は本来、午前に予選が実施され、午後の時間帯に準決勝・決勝が組み込まれる日程だ。本来のスケジュールが覆ったのは、すでに報じられてきたように、アメリカの放送局が莫大な放送権料を支払っているため、同国の放送時間帯に配慮したことにほかならない。それだけアメリカで競泳は人気が高いとも言える。
国際水泳連盟や大会組織委員会は、今まで通りの時間帯で実施するよう、国際オリンピック委員会に要望していたが、認められることはなかった。午前決勝に反対していたのは、実施時間帯が早いという日本国内の視聴率問題もあるが、最も大きな理由は選手の体調面やパフォーマンスへの懸念だ。
平井コーチも朝の決勝に懸念。
実際、日本代表として国際大会で好成績を残す大橋悠依は「私は午前中が苦手なので」と語っているし、日本代表ヘッドコーチの平井伯昌氏が「朝の決勝になったらどうなるのか、と想像はさせるようにしています」と早くから言ってきたのも、その難しさを知るからだ。
午前決勝となったのは今回が初めてではない。2008年の北京五輪でも同様の時間帯だったが、選手は通常と違う調整法が必要とされた。
大会直前に行なった合宿では、早朝に起床して午前5時におかゆを摂り、それから練習。8時で終了し、もう一度食事――というサイクルを作って対応にあたった。また、おかゆの時間の前に十数分の散歩をして体を起こす一助とする選手がいるなど、それぞれが工夫を凝らした。