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井岡一翔は父と決別しても強い。
大みそかの世界戦は実現するか?
posted2018/09/10 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
元3階級制覇チャンピオンでWBAスーパー・フライ級2位にランクされる井岡一翔(SANKYO)が現地時間8日、米カリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラムで米国デビュー、WBCとWBOで同級3位のマックウィリアムズ・アローヨ(プエルトリコ)に10回判定勝ち。4階級制覇に向けて好発進した。
昨年大みそかに突然の引退発表、そして7月にはいきなりの現役復帰宣言。ファンを大いに戸惑わせた井岡のチャレンジは、多くの不安がつきまとっていた。
不安要素その1は、およそ1年4カ月のブランクだ。前回の試合が昨年4月のWBAフライ級王座防衛戦で、しかもブランク明けの試合が初めてのアメリカというのだから、心配になるのも当然だろう。
不安要素その2は対戦相手である。未知の階級となるスーパーフライ級初戦で、いきなり実力者のアローヨを迎えた。アローヨは世界挑戦に2度失敗しているとはいえ、無敗時代のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)に善戦するなど海外でも評価の高い選手だ。
井岡がこれまでのキャリアの中で対戦してきた相手の中でもトップクラスであることは間違いなかった。
父でありトレーナーであった会長との決別。
不安要素その3は、父でありトレーナーの井岡一法・井岡ジム会長と決別したことだ。中学生でボクシングを始めたときから、井岡は父の厳しい指導を受け、緻密で隙のないボクシングを築き上げてきた。
ボクシングにおいて優秀なトレーナーの存在は極めて大きい。トレーナーが代わり、ボクシングが崩れてしまったボクサーはいくらでもいた。父不在がどのような影響を及ぼすのかも、心配されるところだった。
ところがふたを開けてみると、すべての不安は杞憂に終わったのである。