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兄・尚弥と2人でバンタム級を制圧。
井上拓真が世界王座への挑戦権獲得!
posted2018/09/12 14:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
WBC世界バンタム級指名挑戦者決定戦が11日、後楽園ホールで行われ、同級10位の井上拓真(大橋)が同3位のマーク・ジョン・ヤップ(六島)に3-0判定勝ち。初の世界タイトル挑戦に大きく前進した。
井上拓真は破竹の勢いで3階級制覇を達成し、いまや世界的にも高い評価を受けているWBA世界バンタム級王者、“モンスター”井上尚弥の3つ下の弟だ。
小学校のころから兄とともに父、真吾トレーナーの指導を受け、兄に追いつけ追い越せとばかりにボクシングに取り組んできた。兄の存在の大きさの陰に隠れがちだが、高校時代には全国大会を制し、将来の世界王者候補としてボクシング界では有名な存在である。
そんな拓真が迎えるフィリピン出身のヤップは東洋太平洋王座を3度防衛した実力者で、拓真自身が「過去最強の相手」と認める選手。世界タイトルに挑戦するためには、避けては通れない相手とも言えた。
兄は1年半で世界王者、弟はすでに5年弱。
試合は両者が激しく駆け引きをし、4回を終わった時点の公開採点は、ジャッジ1人が拓真の2ポイントリード、残り2人がイーブンだった。拓真は5回、左フックでスリップにも見える幸運なダウンを奪うと、ここから持ち前のスピードとカウンターで徐々にリードを広げた。
最終スコアは117-110、116-111、114-113で拓真に軍配が上がった。
これで世界挑戦に王手をかけたわけだが、本人が「(世界戦のキップが)やっときたという感じはある」と話すように、拓真はスーパーホープとして決して順風満帆なキャリアを歩んできたわけではない。兄の尚弥がデビューから1年半、6戦目で世界王者になったのに対し、拓真は現時点でデビューから4年9カ月、12戦を要している。
高校時代にしのぎを削った田中恒成(畑中)は尚弥の世界タイトル最短獲得記録を更新するプロ5戦目で世界王者となり、既に2階級制覇を達成した。この2人が「速すぎる」という面はあるにせよ、身近なライバルに比べて歩みが遅いのは事実だった。