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東京五輪の酷暑マラソンは任せろ!
アジア金の井上大仁、驚くべき工夫。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2018/08/30 10:30
バーレーンのエルアバシ(左)と最後までデッドヒートを演じた金メダリストの井上大仁。
給水をほぼやらない園田も……。
一方、園田は冬場のマラソンレースの際にはほとんど給水を取らない異色のスタイルがお馴染みになっている。
黒崎播磨の渋谷明憲監督は「彼は冬のレースでは給水ボトルを取らないが、今回は取っていたので、それ自体が彼にとっては暑さ対策だった。5キロのところからしっかり失敗することなく給水を取れていた。もちろん、暑いところで走るシミュレーションはやってきた」と語る。
園田の場合は井上のようにトラック勝負ができるタイプではなく、金メダルを狙うにはロングスパートが必要だった。25キロから先頭に出たのも戦略に沿ったもの。
仕掛けたときに後続を振り切れなかったのが4位という結果につながったが、失速することなくしっかりと最後まで走りきったことについては、河野コーチ、渋谷監督ともども好評価を与えた。
男子選手が女子選手の給水を手伝う。
男子の翌日、同じく早朝6時スタートで行なわれた女子マラソンでは、30キロの給水ポイントに井上大仁が、そして40キロには園田隼がボトルを持って待っていた。
30キロは8時近く、40キロは8時半ほどだった。日差しが強くなり、疲労で苦しくなる時間帯に野上や田中には励ましになったはずだ。
給水の手渡しは慣れた人間でないとできない。
今回はサポートスタッフの人数に限りがあったことで選手も駆り出されることになった。アジア大会ならではだったが、これはこれで良い光景だった。
25キロの給水ポイントで昨年の世界選手権で金メダルに輝いたケニア出身ランナーのチェリモ(バーレーン)がロングスパート。
野上はここにはついていくことはできなかったが、終盤に韓国選手、北朝鮮選手を次々と振り払い、40キロでサングラスと帽子を取って最後のギアアップを図った。